かつて〔仙台堀のおろく〕を自称、すわい女として躰を切り売りしていた彼女も50を超えて寄る年波には勝てない。が、その白髪まじりのひっつめ髪の姿を、むかし彼女の躰を買った男たちの前へさらすと金になった。それが仇となり、深川・十万坪にたむろする不良浪人たちの手にかかったばかりか、彼女の生首をタネに、大伝馬町の呉服問屋〔大丸屋〕へゆすりがかけられた。このことが、若いころにおろくのヒモ同然だった長谷川平蔵の耳へ入ったから……。
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