芝・新銭座の表御番医・井上立泉邸からの帰り、長谷川平蔵は刺客に襲われた。仕損じた刺客は、女のような香りをのこしてきえた。
刺客は、金子半四郎である。敵をもつ身ながら、長年の流浪の生活に、金で人殺しを請け負う仕掛人にまで落ちていた。
半四郎の仮寓は、江戸郊外の染井村の植木屋の小屋。桜の名所――飛鳥山も近い。ここから、入谷田圃あたりまで請け負った殺人に出向く。
斬ったあとは血の匂いを消すために、池之端仲町の〔浪速や〕の名代〔白梅香〕をつける。

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