星もない空のどこかで、春雷が鳴った。
(や……?)
 長谷川平蔵は、一種、名状しがたい妙な気配を背後に感じて立ちどまった。

万延2年(1862)板行の尾張屋版『芝口南・西久保 愛宕下』の〔浜御殿〕(現・浜離宮公園)南端西――芝・新銭座に、「井上」屋敷がある。
池波さんは、表御番医・井上立泉邸をここに置いた――というより、切絵図にある「井上」から、表御番医・井上立泉を思いついた。

堀(汐留川)をはさんだ〔浜御殿〕の西側は、南から……
・松平肥後守(陸奥・会津藩主 28万石)の中屋敷
・松平陸奥守(陸奥・仙台藩主 62万石)の上屋敷
(『鬼平犯科帳』に下屋敷とあるのは誤植)
・脇坂淡路守(播磨・竜野藩主 5万1千石)の上屋敷
『江戸名所図会』の「新橋・汐留橋」の挿絵左下端から、すこし左へ寄ったところにこれらの大名屋敷があった。

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尾張屋版


新橋・汐畄橋(『江戸名所図会』)

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