木村忠吾は、長谷川平蔵着任の2年前、先手組同心だった父の死により、18歳で職をつぐ。
食いしん坊で、女には気がまわっても、仕事は適当……それでいて憎めない青年として描かれ、女性読者にも人気がある。で、『鬼平犯科帳』は、木村忠吾の成長物語とも読める。
初顔見せで思わぬ手柄をたてたこの物語は、年代順では[4―6 おみね徳次郎]の次。このとき22歳。
「人間という生きものは、悪いことをしながら善いこともするし、人にきらわれることをしながら、いつもいつも人に好かれたとおもっている…」
盗賊〔墓火〕の秀五郎の人生哲学は、鬼平のそれに近い。

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