洗いざらしの単衣の裾を端折り、ひからびて埃だらけの素足にわらじばき、白髪まじりの引つめ髪の老婆は、紺もめんの四角なふろしき包みを抱えていた。
この老婆が「針や針。みすや針はよろし」と、町をながして歩く針売りだということは、ひとめ見て平蔵にもわかる。
針売り老婆の姿は『守貞漫稿』(岩波文庫『近世風俗志』)から。池波さんも「みすや針はよろし」のせりふをこの本から借りた。
針売の老姥
(『守貞漫稿』)
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