長谷川平蔵は異変を感じ、すぐに、おふくの後をつけはじめた。田町から入谷田圃(いりやたんぼ)へかかったとき、突如、おふくが弥市の後をつけることをやめ、畑道を切れこんで走り出した。


脅迫されて、弥市は、玉姫稲荷の裏手にある乙坂の庄五郎の盗人宿で鍵をつくっていた。弥市の外出に気をまわした女房のおふくが、弥市の後をつけている姿を、鬼平と佐嶋与力が見かけて尾行をしてみたのだが……。
弥市は、入谷田圃の野良道をたどって帰ったる。
『名所図会』から入谷田圃をさがして、報恩寺や日輪寺(台東区西浅草 3-15- 6)の向うに見つけた。現在の浅草ヴューホテルの東北一帯がそう。


(c)copyright:2000 T.Nishio All Rights Reserved.