ツル(鶴)
平蔵は、役宅の門の外で駕籠から降りた。
門外から門内、玄関構えにかけて、与力・同心、密偵たちが詰めかけている。
引鶴(ひきづる)の群れが空をわたっていた。
駕籠から出た平蔵は、門の外に、小房の粂八と共に跪(ひざまず)いている密偵・玉村の弥吉に気づき、足をとめて、凝(じっ)と見やった。
[22 迷路―11 引鶴]p352 新装p334

各務:ツルは、中国北東部・ロシアの湿原で繁殖のために帰る。旧3月まで居残るツルは引き残る鶴とい、引鶴と同じように季語になっている。引とは帰る意で引鶴も同じ。
西尾:読者や視聴者の要請で『鬼平犯科帳』の連載は引きのばされた。で、[迷路]は、計算上では寛政9年(1977)から翌春にかけての物語となる。長谷川平蔵の史実上の逝去は寛政7年。引鶴は、平蔵を頂点に強くむすばれた長谷川組(先手・弓第2組)を象徴しているのだろう。


マナヅルの飛翔 鹿児島県出水市 2002.01.02



タンチョウヅルの求愛ダンス 北海道阿寒町 2002.02.20


文芸評論評家&バードウォッチャー 各務三郎





ウグイス(鶯)  ・ツル(鶴)  ・ガン(雁)  ・ツバメ(燕)
ヒバリ(雲雀)  ・シラサギ(白鷺)  ・モズ(鵙)  ・スズメ(雀)
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