9月8日のハイライト
文庫巻7-3[はさみ撃ち]をアップ
40歳も年下の女房が喜悦する不倫のあえぎを、隣室から古希(数えの70歳)をすぎた〔猿皮〕の小兵衛が微笑をうかべながら耳をすましている異様さ---引退した70代の盗人の、池波さんの理想の姿かもしれない。
いや、文庫巻11[穴]の〔帯川〕の源助の慰みごとも似たようなもので、読み手を憧れさせる。
それはさておき、小兵衛の本郷1丁目の薬舗〔万屋〕(上の赤○)と、女房のおもんが〔針ヶ谷〕の友蔵に不倫をもちかけられた、湯島天神下の茶屋〔桐や〕(下の赤○)との距離と道筋を確認してみよう。
実測で12,3丁ばかり---おもんの足でも小半刻(30分)とかかるまい。男の誘いにのるには、よほどの決心が要る距離。
が、やがて男をわが寝間へ引きいれるのだから、30女の燃えようには目を見はる---とおもわせるのは池波さんのサーヴィス。
「ふ---盗人(ぬすっと)をやめた盗人の家へ現役(いまばたらき)の盗人が入(へえ)って来やがった---」このセリフが書きたかったのであろう。
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