因州(いんしゅう)浪人・河合伝内
『鬼平犯科帳』文庫巻6に収められた[狐火]で、初代〔狐火〕の勇五郎の先妻お勢が生んだ文吉には、10日早く妾お吉から生まれた又太郎という異腹兄がいた。そして、2代目〔狐火〕の跡目は又太郎に譲られた。
そのことを不服とした文吉は、〔狐火〕の2代目を僭称しながら一味で畜生働きをつづける。その文吉の軍師役を勤めていたのが因州(いんしゅう)浪人・河合伝内であった。
年齢・容姿:40がらみ。たくましい顔立ち。
生国:因幡(いなば)国鳥取城下(現・鳥取県鳥取市)のどこか。
探索の発端:市ヶ谷・田町3丁目の薬種店〔山田屋〕を襲った賊は、主人夫婦と息子夫婦に奉公人を1人のこらず殺害、金品を奪った上で、屋内に3枚の〔狐火札〕を貼りつけていた。
同様の事件は、大坂でも起きている。
かつての銕三郎(平蔵の家督前の名前)時代に、お吉とできて先代・勇五郎にたしなめられたことのある平蔵は、〔狐火〕の仕業は他人ごとではなく、〔狐火〕2代目を男として開眼させたおまさの去就から目をはなさなかった。
それで、河合伝内名義となっている、隅田(すだ)村・木母寺近くの盗人宿の存在も知れた。
結末:隅田村の盗人宿に踏み込んだ鬼平の前に現れた河合伝内は、居合で対抗しようとしたが、高杉銀平師ゆずりの鬼平の技に、伝内はあっけなく殪されていた。
つぶやき:この編は、おまさと2代目〔狐火〕の勇五郎の情熱、2代目と文吉の対決が主題で、河合伝内は、終末近くに、鬼平の居合術を引き立てるために登場するだけだから、ほんとうは目こぼししてもいいのだが、自分の故郷出の脇役なので、人情として看過するわけにはいかない。
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