各篇の年次順
池波さんは、当初、 『鬼平犯科帳』の連載を2年ていどで打ち切る予定にしていた。
その間に、在任中(足かけ8年前後)の物語を完結するつもりで年次を按配していたが、編集側や読者の強い要請で連載を引きのばすことになり、それまで書いたものの間を縫うように、新しい物語を補充していった。
これは、ひどく神経を使う作業であったことが、このリストからも読みとれる。
『鬼平犯科帳』は、池波さんの代表作であるとともに、もっとも苦心を要した連載であったろう。
各物語の事件年次は以下のとおり。
●物語の年次
[1-1 唖の十蔵] 天明7年(1787)春から秋
[1-2 本所・桜屋敷] 天明8年(1788)小正月
[1-3 血頭の丹兵衛] 天明8年(1788) 10月
[4-3 密通] 天明8年(1788と明記)
11月末~12月
[4-4 血闘] 寛政元年(1789)早春
[4-5 あばたの新助] 寛政元年(1789)春~初夏
[5-3 女賊] 寛政元年(1789)初夏、梅雨
[1-4 浅草・御厩河岸] 寛政元年(1789)夏から秋
[1-5 老盗の夢] 寛政元年(1789)初夏から暮れ
[4-6 おみね徳次郎] 寛政元年(1789)夏から秋
[4-7 敵(かたき)] 寛政元年(1789)晩夏から晩秋
[4-8 夜鷹殺し] 寛政元年(1789) 9月から師走
[5-2 乞食坊主] 寛政元年(1789) 1 0月~12月
[5-1 深川・千鳥橋] 寛政元年(1789)秋から師走
[1-6 暗剣白梅香] 寛政2年(1790)初春
[5-4 おしゃべり源八] 寛政2年(1790) 2月
[1-7 座頭と猿] 寛政2年(1790)梅雨のあがった夏
[1-8 むかしの女] 寛政2年(1790)晩夏
[5-5 兇賊] 寛政2年(1790)秋
[5-7 鈍牛] 寛政2年(1790) 12月
[6-1 礼金二百両] 寛政3年(1791) 1月
[6-2 猫じゃらしの女] 寛政3年(1791) 1月~2月
[2-3 女梅摸お富] 寛政3年(1791)夏の陽ざし p97
[6-3 剣客] 寛政3年(1791)春
[6-4 狐火] 寛政3年(1791)夏
[6-6 盗賊人相書] 寛政3年(1791)盛夏
[2-2 谷中・いろは茶屋] 寛政3年(1791)晩夏
[6-5 大川の隠居] 寛政3年(1791)初秋
[6-7 のっそり医者] 寛政3年(1791)初秋
[2-4 妖盗葵小僧] 寛政3年(1791)初秋から4年へ1年がかり
[7-1 雨乞い庄右衛門] 寛政3年(1791)秋
[2-5 密偵] 寛政3年(1791)初冬(12月) p 196
[7-2 隠居金七百両] 寛政4年(1792)正月~翌5 (1793)年夏 p41
[7-3 はさみ撃ち] 寛政4年(1792)初春 p75
[2-1 蛇の眼] 寛政4年(1792)の初夏村田銕太郎昌敷
が寄場奉行
[7-4 掻堀のおけい] 寛政4年(1792)晩夏
[2-6 お雪の乳房] 寛政4年(1792)晩秋 p 237
[7-5 泥鱈の和助始末] 寛政4年(1792)秋・暮れ~正月 p144
[2-7 埋蔵金千両] 寛政4年(1792)末~5年の年初 p268
[7-6 寒月六間堀] 寛政5年(1793) 1月
[3-1 麻布ねずみ坂] 寛政5年(1793) 2月上旬
[7-7 盗賊婚礼] 寛政5年(1793) 2月
[7-7 用心棒] 寛政5年(1793) 2月
[3-2 盗法秘伝] 寛政5年(1793)春([女賊] p120 )
[3-3 艶婦の毒] 寛政5年(1793)春 p75
[3-4 兇剣] 寛政5年(1793)晩春 p161
[3-5 駿州宇津谷峠] 寛政5年(1793)初夏 p214
[3-6 むかしの男] 寛政5年(1793)初夏
[8-2 あきれた奴] 寛政5年(1793)梅雨~12月
[4-1 霧の七郎] 寛政5年(1793)梅雨の明けた夏
[8-3 明神の次郎吉] 寛政5年(1793)夏
[8-4 流星] 寛政5年(1793)7月
[8-5 白と黒] 寛政5年(1793)晩夏
[4-2 五年目の客] 寛政5年(1793と明記)秋
[8-6 あきらめきれずに] 寛政5年(1793)秋
[8-6 雨引の文五郎] 寛政5年(1793)秋
[9-2 鯉肝のお里] 寛政5年(1793)晩秋
[9-3 泥亀(すっぽん)] 寛政5年(1793) 10月
[9-4 本門寺暮雪] 寛政6年(1794) 正月
[9-5 浅草・鳥越橋] 寛政6年(1794) 2月
[4-5 あぱたの新助] 寛政6年(1794)春~初夏
[9-6 白い粉] 寛政6年(1794)春の終わり
[9-7 狐雨] 寛政6年(1794)晩春
[10-1 犬神の権三] 寛政6年(1794)初夏
[10-2 蛙の長助] 寛政6年(1794)初夏
[10-3 追跡] 寛政6年(1794)初夏
[10-4 五月雨坊主] 寛政6年(1794)盛夏~翌年夏
[11-3 穴] 寛政6年(1794)夏の終わり
[10-5 むかしなじみ] 寛政6年(1794)秋
[5-6 山吹屋お勝] 寛政6年(1794)秋
[10-6 消えた男] 不明
[10-7 お熊と茂平] 寛政6年(1794)秋
[11-1 男色一本儡鈍] 寛政6年(1794)秋
[11-2 土蜘蛛の金五郎] 寛政6年(1794)秋
[11-4 泣き味噌屋] 寛政6年(1794)秋
[11-5 密告] 寛政6年(1794)秋
[11-6 毒] 寛政6年(1794)師走
[11-7 雨隠れの鶴吉] 寛政6年(1794)秋から翌年正月
[12-1 いろおとこ] 寛政7年(1795) 2月
[12-2 高杉道場・三羽烏] 寛政7年(1795) 2月
[12-3 見張りの見張り] 寛政7年(1795)
[12-4 密偵たちの宴] 寛政7年(1795)春~10月
[12-5 二つの顔] 寛政7年(1795)花も散った春
[12-6 白蝮] 寛政7年(1795)晩春から夏
★この年の5月10日、平蔵病死(史実)
明日からの[おまさ、誘拐]の事件は、寛政6年(1786)にはじまらないとつじつまがあわないことを、このリストでお確かめを。
文庫巻12からは平蔵の死後であることを池波さんも承知で書き進めている。
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