口合人捜(さが)しの旅(6)
〔畜生。なんてこった
境木の茶店の奥座敷で外道医・岸本公道の手当てをうけながら唸って入るのは、〔砂井(すない)の鶴吉(つるきち)であった。
公道が親切に訊いた。
「なにか困ったことでもあるのか?」
「はい。〔馬入(ばにゅう)〕の親分さんに届ける手紙が――」
「馬入のといえば、そなたさんもどこかの親分衆のところのお人で――」
「違います。江戸の火盗改メのお頭・長谷川平蔵さまのお使いとなれば、ほうってもおかれぬの。よし、わしが家であずかろう。いや、なに、手紙はわしがところの若いのに〔馬入〕へとどけさせる。安心せい」
鶴吉は戸塚の公道の家へ引き取られて養生することになった。
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