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2005.11.14

〔塩井戸(しおいど)〕の捨八

『鬼平犯科帳』文庫巻16の冒頭に置かれている[影法師]で、〔塩井戸(しおいど)〕の捨八は、一石橋で〔さむらい〕松五郎を見かけた(じつは、松五郎のそっくりさんの同心・木村忠吾だったのだが)。
(参照: 〔網掛〕の松五郎の項)
尾行しているうちに、麹町8丁目の菓子舗〔池田屋〕を見張る結果になってしまった。
話は、この夏に遡る。
上州・熊谷宿の料理屋〔棚田屋〕を襲い、270余両を奪い、昔なじみの〔井草(いぐさ)〕の為吉が連れてきた浪人くずれの長坂万次郎に一味をつけて金を乗せた馬ともども、上州・白石(しろいし)在の村はずれの盗人宿へ先行させた。
(参照: 浪人くずれ長坂万次郎の項)
殿(しんがり)をつとめた捨八が隠れ家へ来てみると、長坂浪人と〔さむらい〕松五郎が手下3人を斬り殺し、為吉にも傷をおわせて、馬もろとも逃走したというではないか。
もちろん、それは、長坂浪人と為吉が仕組んだ、金を横領するための手のこんだ芝居であった。
(参照: 〔井草〕の為吉の項)

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年齢・容姿:40歳。浪人姿。
生国:上野(こうずけ)国緑野郡(みとのこおり)白石村あたり(群馬県藤岡市白石あたり)。
小物の盗賊なので、生国近くに本拠を置いているとみて。

探索の発端:〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵の推薦で密偵になった〔蛸坊主(たこぼうず)〕の五郎が、たまたま、神田橋門外の茶店で一服していたとき、〔井草〕の為吉を見かけた。
(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項)
(参照: 〔蛸坊主〕の五郎の項)
首領〔湯屋谷〕の富右衛門が5年前に病死して以来、流れづとめをしいている男である。尾行して、西神田・蝋燭町の旅籠〔井筒屋〕へ宿泊していることをつきとめた。
そこには、3人ほどの小人数で小さな盗めが専門の〔塩井戸〕の捨八もい、どうやら、麹町8丁目の菓子舗〔池田屋〕に目をつけているらしい。

結末:西神田・蝋燭町の旅籠〔井筒屋〕を見張っていた忠吾同心と鉢合わせして逃げるところを、酒井同心らに逮捕された。
為吉は菓子舗〔池田屋〕を見張っているところを、逮捕。
両人とも、死罪であろう。

つぶやき:「塩井戸」で地名辞書をあたったが、掲載されていなかった。「塩井戸」というから、海岸べりかとも思ったが、「牛尾」が塩分を含んだ温泉が湧き出た「潮」の例もある(静岡県島田市金谷)。海岸にこだわらないことにした。
余談だが、藤岡市の西隣の多野郡吉井町に「塩」という地名がある。関連はないとおもうが、塩分を含んだ鉱泉が湧出すると。

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