〔須磨(すま)〕の音次郎
『鬼平犯科帳』文庫巻21の巻頭に置かれている[泣き男]で、元盗賊の座頭・辰の市(50男)や浪人盗賊・青木源兵衛(40前後)たちのお頭だったのが〔須磨(すま)〕の音次郎である。
数年前に病没したあと、青木源兵衛が一味の追随者たちを率いて盗めをつづけている。
辰の市は足を洗い、15も歳下の女房・お峰(36,7歳)と平穏な暮らしをしていたが、夫婦で出入りしている四谷・伝馬町3丁目の文房具屋〔玄祥堂〕への押し込みの手引きを、源兵衛に強請されていた。
年齢・容姿:どちらも記載がない。
生国:摂津(せっつ)国八部郡(やべこおり)西須磨村(現・兵庫県神戸市須磨区須磨本町)。
六甲山地の南西端で摂津国の西の隅が転じてスマとなったとの説が有力視されている。
須磨人の海辺常去らず焼く塩の辛き恋をも吾はするかも 「万葉集」巻17
探索の発端:音次郎は病没しているので、姿は見せない。
同心・細川峯太郎が非番で飲酒後に千駄ヶ谷あたりを散策中、青木源兵衛の躰に触れて投げ飛ばされた。
その源兵衛と見知りの座頭・辰の市が、仙寿院(渋谷区千駄ヶ谷2丁目)の前の小川の向こうの百姓家の庭にいっしょにいるところを見て怪しみ、鬼平に報告して、見張りがはじまった。
仙寿院 庭中(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
結末:捕縛のときに抵抗した青木源兵衛は、鬼平に斬られた。
一切を〔小房〕の粂八に相談していた辰の市はお構いなし。
(参照: 〔小房〕の粂八の項 )
つふやき:池波さんが物語の発想を『江戸名所図会』の長谷川雪旦の絵から発している例は数多い。
この篇は、引用した「仙寿院 庭中」と「千駄ヶ谷八幡宮(現・鳩の森神社)」に2景に拠っている。
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