カテゴリー「137愛媛県 」の記事

2005.10.24

仕掛人・金子半四郎

『鬼平犯科帳』文庫巻1に収録されているシリーズ第6話(正確には第5話)[暗剣白梅香]で、鬼平の暗殺を引き受ける浪人・金子半四郎は20年来、親の敵(かたき)をさがして旅をつづけているうちに、大坂で〔白子(しらこ)〕の菊右衛門の手によって仕掛人の仕立てられてしまう。
(参照: 〔白子〕の菊右衛門の項)
江戸で、鬼平の暗殺を以来したのは根津の顔役〔三の松〕平十であった。起(おこ)りは〔蛇(くちなわ)〕の平十郎。
(参照: 〔三の松〕平十の項 )
(参照: 〔蛇〕の平十郎の項)

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年齢・容姿:38歳(寛政2年 1790)。色白の、頬骨が張った細面。ふとやかな鼻、濃い眉。眼球が見えないほどに細い目。総髪。ひげは剃っている。女のようにやさしい声音(こわね)。
生国:伊予(いよ)国喜多郡(きたこうり)大洲(おおず)村(現・愛媛県大洲市)

探索の発端:右側は浜御殿という汐留川ぞいの道で、鬼平は刺客に襲われた。抜きあわす前に走って間をとったのが幸いして斬られずにすんだが、鋭い太刀風であった。
曲者があとにのこしたのは、なんともいえず妖しげな香り。
同じ香りをつけていた湯島横町の菓子舗〔近江や〕の女将が、池の端・仲町の〔浪花や〕の〔白梅香〕だと告げたので、同店に張りこんでいた同心・酒井祐助だったが、金子を逃がしてしまった。

結末:横川の扇橋の南、石島町の船宿〔鶴や〕で岸井左馬之助と酒を酌みかわしている鬼平を狙って入ってきた金子半四郎は、階段で、亭主の利右衛門(じつは敵の森為之介)に包丁で刺されてあっけなく返り討たれてしまう。

つぶやき:盗賊が火盗改メのお頭の仕掛けを依頼するという、池波さんの発明の仕掛人稼業をからませた篇。鬼平が襲われる最初の物語である。それだけに、舞台設定も凝っている。
こののちに、森為之介は細君の里の近江国へ身を隠すので、船宿は〔小房〕の粂八が預かり、〔五鉄〕と並んでシリーズの主要ポイントの一つとなる。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)

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2005.08.17

〔猿皮(さるかわ)〕の小兵衛

『鬼平犯科帳』文庫巻7に収められている[はさみ撃ち]の主人公は、本郷1丁目の薬種店〔万屋〕の主人・小兵衛こと、元は〔猿皮(さるかわ)〕の「通り名(呼び名)」で、芸州・広島に本拠を置き、中国すじから九州の博多、長崎まで荒らした2代目。7年前に引退し、配下の1人---弥治郎を番頭にすえて〔万屋〕を開いた名代は、せき、たんの妙薬〔黒竜丸〕。

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年齢・容姿:70をこえている。小柄。才槌あたまにちょこんと白い髷。柔和な細い眼。歯もほとんど抜けている。卵の黄身をまぶした御飯を日に2度。1合の酒が食生活。
生国:「通り名」の〔猿皮〕は、「猿川」を小粋にいい変えたものとすると、広島の対岸、伊予(いよ)国風早郡(かざはやこうり)猿川村(現・愛媛県北条市猿川)。
立岩川中流の左岸。近くに国津比古命(くにつひこのみこと)神社(八反地)と櫛玉比売命(くしたまひめのみこと)神社がある。後者は物部、風速、越智氏の氏神。

探索の発端:小兵衛とは40歳も年齢が離れているおもんを、貸本屋をよそおっている〔針ヶ谷〕の友蔵(32歳)がたらしこんだ。相棒の〔大亀(おおがめ)〕の七之助(30がらみ)が、〔舟形(ふながた)〕の宗平に助っ人探しを頼んだことから、探索がはじまった。
(参照: 〔大亀〕の七之助の項)
(参照: 〔舟形〕の宗平の項)

結末:おもんの寝間へ忍んで行った友蔵が、内側から戸締りをはずすと、唐辛子入りの目潰しが飛んでき、つづいて薪が。表には、助っ人に化けた鬼平と同心・山田市太郎たちが逃げ道を固めていた。

つぶやき:〔猿皮(さるかわ)〕の小兵衛も、池波さんが創作した個性的な盗人の1人といえる。なにしろ、お盗めにかかるときの興奮にくらべると、「女の躰をいじることなぞ、ばかばかしくて---」と、不倫をしている女房のあのときの声をふすま越しにきいておもしろがっているのだから、枯淡というか、洒脱というか。

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