〔大亀(おおがめ)の七之助
『鬼平犯科帳』文庫巻7に収められている[はさみ撃ち]で、かつて〔墓火(はかび)〕一味にいて運よく捕縛をまぬがれた2人のうちの1人。もう1人は〔女だまし〕が専門の〔針ヶ谷(はりがや)〕の友蔵(32歳)。
(参照: 〔墓火〕の秀五郎の項)
その友蔵が本郷1丁目の薬種屋〔万屋〕小兵衛方の女房おもん(31歳)をたらしこんで、彼女の寝間へ忍んでゆき、押し込みの当夜は、内側から戸をあける算段をしている。
そんなことができるのも、おもんの亭主・小兵衛は齢が40も上で、寝床にもう女を必要としなくなり、4年前から別の部屋で寝ているためである。
もっとも、この小兵衛老人、只者ではない。50年前に盗みの世界へ入り、亡父の跡目である〔猿皮(さるかわ)を継いで2代目となり、7年前に引退したご仁である。本拠は芸州・広島、テリトリーは中国筋から九州へかけてだったから、江戸の火盗改メは〔猿皮〕一味については知らない。
年齢・容姿:31,2歳。記述はないが、上背のある友蔵に比し中肉中背と推察。
生国:陸前(りくぜん)国黒川郡(くろかわこうり)大亀(おおがめ)村(現・宮城県黒川郡冨谷(とみや)町大亀)
町内の標高115メートルの大亀山の頂上に、亀のような形をした「亀石」がかさなっているためについた村名と。
探索の発端:両国橋上で七之助が、7年ほど前に流れづとめで助(す)けたことのある〔初鹿野(はじかの)〕の音松一味の元幹部---〔舟形(ふながた)〕の宗平(73歳)に出会い、急ぎの助(す)けばたらきを5人ほど頼んだ。
(参照: 〔初鹿野〕の音松の項)
そのことはもちろん鬼平につつぬけとなったが、七之助を尾行した〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵が雨の柳原で見失ってしまった。
(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項)
そこで、鬼平(47歳)以下、木村忠吾(25歳)、小柳安五郎(26歳)、山田市太郎、五郎蔵(55歳)が盗人に化けて一味に加わることになった。
結末:当夜、〔針ヶ谷〕の友蔵が内側からしまりを外そうとしたとき、目つぶしと薪が飛んでき、友蔵はほううほのていで転がりでて計画の中止を告げたが、助ばたらき人に化けていた鬼平らに取り囲まれてあっけなく逮捕。死罪であろう。
つぶやき:『鬼平犯科帳』に登場する盗賊のお頭の中でも、ユニークさ、喜劇性の点で5指に入るご仁。女房の寝取られ房事の些細を、襖ひとつへだてて耳にしながら、「退屈しのぎの楽しみ」と割り切っている。
(女の躰をいじくりまわすことなぞ、ばかばかしくて---)
とうそぶかせたときの池波さんは、48歳。
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