脚本家・野上龍雄さん
2007年4月6日(金)の午後9時から、2時間スペシャル『鬼平犯科帳』の[一本眉]が放映される。
中村吉右衛門さん=鬼平のレギュラーでは、1989(平成元)年9月20日に放映されている。
プロデューサー:市川久夫さん・能村庸一さん(フジテレビ)
脚本:野上龍雄さん
監督:田中徳三さん
題名は[一本眉]だし、〔清洲(きよす)〕の甚五郎が主役だったが、ストーリーは、[〔墨つぼ(すみつぼ)〕の孫八]から借りられていた。
推察するに、原作の[一本眉]はとてもよくできた話なのだが、いかんせん、内容のほとんどが本格派〔清洲〕の甚五郎一味と、急ぎばたらき派の〔倉渕(くらぶち)〕の佐喜蔵一味の盗みの先手争い(?)で、長谷川平蔵組からはコメディ・リリーフ役の同心・木村忠吾がちらっと出て、〔一本眉〕に酒肴をおごられるだけ。
彦十、おまさ、粂八、伊三次の出番がない。
これでは、鬼平テレビとして鬼平ファン視聴者が納得すまい---とおもんぱかったのではなかろうか。
もう一つ愚考を加えると、木村忠吾は、小なりといえども、中央官庁・徳川幕府の役人=火盗改メの同心である。
その忠吾が、双方が互いの身分を知らないとはいえ、盗賊に酒肴をおごられるのは、役人に清廉をもとめる現代の庶民感覚からいって、だらしがなさすぎると判定されたか。
一方の〔墨つぼ〕の孫八は、「通り名(呼び名)」からも察しがつく、大工上がりの盗賊の首領(かしら)だが、難病で死ぬだろうという恐怖感にとりつかれている。
長谷川組とのつながりは、かつて引き込みに使ったこともあるおまさを介してついている。
そこで、プロデューサーから、脚本の野上龍雄さんへ、〔清洲〕の甚五郎の〔一本眉〕に、〔墨つぼ〕の孫八の身上(しんじょう)をかぶせて物語がつくれないかとの依頼があったのであろう。
野上龍雄-Wikpediaによると、1928年の東京府生まれ。テレビの『鬼平犯科帳』には、松本幸四郎(白鸚丈)=鬼平のときからずっと脚本を担当している大ベテランの一人。
もっとも、[一本眉]の製作は中村吉右衛門さん=鬼平のときのみ。野上さん59歳、円熟期に書いたもの。
今回のスペシャル番組化では、かつての1時間ものだった脚本を倍の2時間にのばすため、木村忠吾がおごられる湯島天神裏門の居酒屋〔次郎八〕の場も加えられた。
前の〔清洲〕の甚五郎役は故・芦田伸介さんだったが、こんどは宇津井健さん。
野上さんの仕事歴は、野上龍雄 (ノガミタツオ) - goo 映画で一覧できる。赫々たる業績である。
2時間スペシャル『鬼平犯科帳』の[一本眉]、期して待つべし。
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