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2005.06.12

〔清洲(きよす)〕の甚五郎

『鬼平犯科帳』文庫巻13に収録の[一本眉]の主人公。「濃い眉と眉の間にも、もじゃもじゃと毛が生えているのだ。つまり、眉毛と眉毛つながっている。二つの眉毛が一すじになって見える」
名古屋、京都、大坂に盗人宿を置き、江戸では湯島天満宮裏門に近い煮売り酒屋〔次郎八〕がそれ。

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湯島天満宮(『江戸名所図会』より 塗り絵師:ちゅうすけ)

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年齢・容姿:50男。中肉中背。尋常な目鼻立ちだが、眉毛だけが上記のとおり。
生国:尾張(おわり)国春日部郡(かすかべこうり)清洲村(現・愛知県西春日井郡清洲町清洲)。
『日本歴史地名大系』(平凡社)は「清洲村の区域は清洲の城下が慶長末年に名古屋へ移り、そのあとに開墾された地域」と記す。

探索の発端:元飯田町中坂上の銘茶問屋〔栄寿軒・亀屋〕が賊に襲われ、主人夫婦と使用人のほとんどが惨殺された。
かねて〔清洲(きよす)〕一味が狙いをつけていた店だが、賊は〔清洲〕一味ではなかった。甚五郎の下命で下女となって引き込みに入っていたおみち(32歳)が、座頭〔茂の市〕の名を賊が口にしたのを聞いた。
(参照: 引き込み女おみちの項)
(参照: 座頭・茂の市の項)
〔清洲〕一味は〔茂の市〕を見張り、やってきた〔野柿(のがき)〕の伊助を尾行、板橋宿の〔倉渕(くらぶち)〕の佐喜蔵一味の盗人宿---料理・貸し座敷〔岸屋〕の所在を割りだした。
(参照: 〔倉渕〕の佐喜蔵の項)

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板橋の駅(『江戸名所図会』より 塗り絵師:ちゅうすけ)

〔岸屋〕へ夜襲をかけた〔清洲〕一味は、〔倉渕〕の佐喜蔵をはじめとして一味のほとんどを殺し、2名と女5人を柱へ縛りつけて引きあげた。
翌日、火盗改メの役宅へ、「名無しの権兵衛」よりとして、板橋の〔岸屋〕の次第が記された投書が投げこまれて、〔栄寿軒・亀屋〕の犯人たちがあきらかになった。

結末:〔清洲(きよす)〕の甚五郎は、江戸での盗めをいっときあきらめて、引き込みのおみちを伴い、上方へ。

つぶやき:正統派の盗賊が、畜生ばたらきの盗賊を懲らしめるという、ちょっと趣向の変わった物語。
池波さんによる忍者ものの2作目『忍者丹波大介』(新潮文庫)p155に、〔一本眉〕と呼ばれる下忍が出ている。
『忍者丹波大介』は、『鬼平犯科帳』の[一本眉](『オール讀物』1975年12月号)に先立つこと11年、昭和39年(1964)『週刊新潮』5月11日号から8月17日号まで14回連載され、のち、650枚が書き加えられて長篇となった。

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コメント

正統派・清洲の甚五郎vs兇盗・倉渕の佐喜蔵という面白い話でしたが、話とは全く関係ない部分に登場する忠吾がおかしくてたまりませんでした。盗人に小遣いをもらってしまうのですからね。

さて、TV版の清洲の甚五郎は芦田伸介さんが演じていました。が、何故、「墨つぼの孫八」と「一本眉」を足して3で割ったような作りになってしまったんですかね?
勿体無いの一言です。

投稿: 豊島のお幾 | 2005.06.12 23:28

清洲の甚五郎と墨つぼの孫八は性格の、全く違っているのですが、
それを一本にしたビデオの筋は納得の行かないものを感じます。 喜劇と悲劇を混ぜるところに無理があるのでしょうね。 木村忠吾が悲劇向きではないからでしょうか。

投稿: edoaruki | 2005.06.13 08:44

>豊島のお幾さん

火盗改メの同心であるのに、忠吾が〔清洲〕の甚五郎とはしらず、〔一本眉〕のおじさんとおもいこみ、酒をおごられ、小遣いをもらう。

一方の甚五郎も、忠吾を火盗改メの同心とはつゆおもわないで酒をおごってやる。

このあたりの行き違いぶりがおかしいのですよね。

悪いことをしなが、善いことをする---人によくおもわれたい---池波哲学そのものです。


>edoaruki さん

そのビデオの題名は、何となっていますか。

投稿: ちゅうすけ | 2005.06.13 16:30

ビデオのタイトルは「一本眉」
ゲストの盗賊も清洲の甚五郎なのですが、佐喜蔵一味に甚五郎が追われているという設定。平蔵に佐喜蔵殺しを助てもらうことになり、五両を渡していました。
煮売り居酒屋〔次郎八〕も出てこず。
原作を読む前に見てしまったので意外と納得してしまいました。

投稿: 豊島のお幾 | 2005.06.13 23:33

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