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2005.12.18

座頭・茂の市

『鬼平犯科帳』文庫巻13に収録の[一本眉]で、〔倉渕(くらぶち)〕の佐喜蔵一味の〔嘗役(なめやく)〕をつとめたのが座頭・茂の市である。〔倉渕〕一味は、〔清洲〕(きよす)〕の甚五郎の一味がじっくりと工作していた元飯田町中坂上の銘茶問屋〔亀屋〕方を、畜生働きでさっさと襲ってしまったのである。
(参照: 〔倉渕〕の佐喜蔵の項)
(参照: 〔清洲〕の甚五郎の項)

213

年齢・容姿:50がらみ。恰幅がいい。なかなかりっぱな顔だち。言葉づかいも上品。
生国:
江戸だろう。目が不自由だから、遠国からきたとはおもえない。
〔高砂煎餅〕が名代の神田三河町4丁目の〔高砂屋〕の横道を入っていったいまの家に住んだのは7年前からだが、その3年前に、旅籠に泊まっている〔野槌(のづち)〕の弥平を治療して、盗みの世界へ引き込まれた。

探索の発端と結末:〔亀屋〕の事件を調べていた火盗改メは、茂の市を圏外に置いた。ところが、〔清洲〕一味の引き込みで、4年も前から〔亀屋〕へ下女として入っていたおおみちが、事件のとき、屋根にのがれて生きのこり、仔細を甚五郎に告げたために、茂の市の家が〔清洲〕一味によって見張られ、板橋宿にあった〔倉渕〕一味の盗人宿が割り出され、襲われてほとんどが惨殺。
(参照: 引き込み女おみち
茂の市と女房のおふみも、〔清洲〕一味によって始末された。

つぶやき:〔亀屋〕の事件の夜、茂の市は現場に居合わせてはいなかった。
なのに、引き込みの下女・おみちが、なぜ、茂の市があやしいと断じたかというと、犯人たちの「さすがに、茂の市の嘗役はたいしたものだ」という盗人同士の会話を耳にしたからである。
お盗めの最中に、犯人同士がうっかり会話をかわしたのは、一家皆殺しにしたとおもい、つい油断したからであろうが、現場では、目さしや指の動きで意志をつたえあうのが、本格の盗賊集団の心得のはず。

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