引き込み女おみち
『鬼平犯科帳』文庫巻13に収録の[一本眉]で、〔清洲(きよす)〕の甚五郎(50男)が狙いをつけた元飯田町の銘茶問屋〔亀屋〕方へ、4年前から下女として送りこまれていたのが引き込み女おみちである。
(参照: 〔清洲〕の甚五郎の項)
あと3日で〔清洲〕一味が押し入るという夜、別の盗賊団が〔亀屋〕を襲い、一家皆殺しにして1,500両前後を奪った
その夜---おみちは、下痢腹で厠へ立ったときに異常を感じ、台所の屋根へ登って難をのがれたばかりか、賊が「茂の市の甞役はたいしたものだ」といったのを聞き、出入りの座頭の茂の市(50男)が一枚かんでいることを知り、〔清洲〕の甚五郎へ報告した。
甚五郎は名古屋、京都、大坂に盗人宿を置き、江戸では湯島天満宮裏門に近い煮売り酒屋〔次郎八〕がそれで、おきよが惨劇のあった〔亀屋〕から逃げて身をかくした先も〔次郎八〕だった。
年齢・容姿:32歳。容姿の記述はないが、機転はきく。
生国:甚五郎の信任がきわめて篤いところから察するに、同じ、尾張(おわり)国春日部郡(かすかべこうり)清洲村(現・愛知県西春日井郡清洲町清洲)の出かも。。
探索の発端:この篇の場合の探索は、火盗改メのそれではにい。
、「畜生ばたらき」で先をひされた〔清洲〕一味の、意趣返しの探索である。おみちが耳にした「茂の市」が手がかりとなり、家を見張って、残金をとどけにきた〔野柿(のがき)〕の伊助が尾行(つ)けられ、上州・高崎に本拠を置く〔倉渕(くらぶち)〕の佐喜蔵一味の凶行とわかった。
(参照: 〔倉渕〕の佐喜蔵の項)
結末:〔清洲〕の甚五郎一味9名が、板橋宿の盗人宿を襲い、2を柱にしばってあとは惨殺。その上、〔亀屋〕の凶行のことを火盗改メの役宅へ投げ文した。
茂の市夫婦も、殺して土中に。
つぶやき:本格派の盗賊が見せしめに〔畜生ばたらき〕の盗賊たちを襲うという設定は、西部劇からの援用かもしれない。いわゆるガンマン自警団の亜流。
これにコメディ・リリーフ役の同心・木村忠吾がからむから、毒が薄まり、〔清洲〕方の報復行為が正しいことのようにすり替わる。
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