〔羽黒(はぐろ)〕の九兵衛
『鬼平犯科帳』文庫巻10に入っている[五月雨坊主]で、絵師・石田竹仙(35,6細)が自分を描いた似顔絵から、事件の主役の〔羽黒(はぐろ)〕の九兵衛へとつながっていく。
(参照: 絵師・石田竹仙の項)
ことは、妻恋明神裏に転居した竹仙の庭に倒れこんだ男から始まった。もちろん竹仙は、その男の似顔絵も描いてはいる。しかし、鬼平の推理は別だった。
年齢・容姿:40男。馬面。髭あとが青々としている。がっしりした体格。
生国:越後(えちご)国蒲原郡(かんばらこおり)羽黒村(新潟県北蒲原郡中条町羽黒)。
羽黒山系が走る越後には、「羽黒」という名の地区がいくつもあるが、江戸期からそう呼ばれており、戸数の少なさから中条町を採った。
ここは、池波さんが『堀部安兵衛』の取材に訪れた新発田市に接している。
探索の発端:竹仙が自分を描いた似顔絵を見た、提灯店〔みよしや〕の娼妓およねが、善達坊主(50がらみ)に似ていると証言したことから、谷中の天徳寺へ疑惑がかかった。
結末:天徳寺の善達和尚の弟が、越後から岩代(福島県)信州へかけて荒らしている〔羽黒〕の九兵衛で、江戸での一仕事を狙って出府、天徳寺の住職を殺害して寺を乗っとっていた。
一味6名はことごとく逮捕。死罪であろう。
つぶやき:またしても他人の空似が使われている。本篇では、竹仙→善達→九兵衛の三段飛びである。
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