〔暮坪(くれつぼ)〕の新五郎
『鬼平犯科帳』文庫巻24に所載の[二人五郎蔵]で、まわり髪結いの五郎蔵の女房おみよを拐かして、火盗改メ役宅や大店に出入りしている亭主の五郎蔵を脅迫する盗賊。さきに密偵・伊三次を刺殺して処刑された〔強矢(すねや)〕の伊佐蔵の実弟。
(参照: 〔強矢〕の伊佐蔵の項)
年齢・容姿:41歳。おだやかそう。へちま顔。女のような声。
生国:越後(えちご)国蒲原郡(かんばらこおり)暮坪(現・新潟県五泉市暮坪)
探索の発端:上記したとおり、〔暮坪(くれつぼ)〕の新五郎が、まわり髪結いの女房おみよを誘拐して亭主をおどし、意のままにあやつろうとした。その五郎蔵の所作に不審を抱いた鬼平が、身辺を探らせて、〔暮坪〕の千駄ヶ谷の仙寿院脇の盗人宿で〔強矢〕の下にいた〔戸祭〕の九助と、引きこみの〔長尻〕のお兼がつなぎをつけた神田・旅篭町の菓子舗〔桔梗屋〕に見張りがついた。
仙寿院庭中(『江戸名所図会』より 塗り絵師:ちゅうすけ)
(参照: 〔戸祭〕の九助の項)
結末:〔桔梗屋〕に押し入ろうとした〔暮坪〕一味15名は、待ち伏せていた火盗改メに全員捕縛。役宅を襲ってきた盗賊浪人8名も酒井、沢田、松永同心たちと辰蔵によって斬り伏せられた。
暮坪(くれつぼ)〕の新五郎は火刑。
つぶやき:新潟県の「暮坪」は簡単に割り出せたが、迷ったのは、ネット検索で知った、〔暮坪蕪(かぶ)〕とも呼ばれる岩手県の花巻産のかぶ、それを摩り下ろして〔つゆ〕へ入れてたぐる遠野そば---別名〔暮坪そば〕の存在であった。
この2品については、地元の鬼平ファンの方の郷土自慢のコメントがいただけるとうれしい。
で、けっきょく、実兄〔強矢(すねや)〕の伊佐蔵と生国をそろえることで決着させた。
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コメント
「剣術の筋だけは父親に似ずダメだ」と左馬之助からいわれていた辰蔵が役宅に押し入ろうとした盗賊浪人に大活躍をした戦いの様は、
目を見張るばかりでした。
文中(P.92)で平蔵が辰蔵へ「高杉一刀流
の型をつけてつかわす」といってますが、これは高杉道場で会得したという意味ですね。
平蔵の一刀流は当時主流であった小野派
一刀流のことでしょうか。
江戸時代の剣術史少し調べてみたいとおもっています。
投稿: みやこのお豊 | 2005.04.16 07:11
>みやこのお豊さん
一刀流はたくさんの分派があります。
高杉道場の場合は、高杉銀平が開眼・会得した型があったのでしようね。
平蔵の場合、小野派一刀流を受け継いでいる小野次郎右衛門忠吉(ただよし)が同じ先手組(とはいえ筒の18組)組頭でしたから、剣の話はしたかもしれません。
投稿: ちゅうすけ | 2005.04.16 10:39