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2012.07.10

口合人捜(さが)しの旅(5)

同心・小柳安五郎やすごろう 33歳)とお(その 32歳)より1日おくれで江戸を発した〔砂井(すない)〕の鶴吉は、先行の2人が本牧(ほんもく)あたりでもたもたしているあいだに、
〔2本(りゃんこ)差し)なんかにまけるものか〕
といったみょうな競争心をだしてしまった。

大滝(おおたき)の五郎蔵(ごろうぞう 58歳)から、くれぐれも、
「おれたちは長谷川さまのために働いてんでいるのであって、世の中を正そうとか、直そうとか大きなことをかんがえるではねえ」
いわれて納得していることを、つい、わすれてしまっていた。


境木の茶屋の前で石蹴りをして遊んでいた子どもの石が武士の足先をかすめただけで、酔っていた武士を逆上させてしまった。
茶台で休んでいたおんな客の一人が、
「あれしききのことで……」
つぶやいたのが耳へはいったらしい。

武士もこのごろは諸物価の高騰で家計が苦しくいらいらしている。
それにくわえての昼間っからの酔いである。
子どもを踏みつけ、刀をぬいた。
それに鶴吉がぶつかっていった。

武士がよたっているすきに子どもなきながら逃げたが、刀傷をおったのは鶴吉で、右足をやられた。
武士も血をみてかかわりになるのを恐れて逃げた。
茶屋の爺いが家へ引きいれて介抱してくれたが歩けなかった。

くやしかった。

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