座頭・辰の市
『鬼平犯科帳』文庫巻21の巻頭に置かれている[泣き男]で、〔一人ばたらき〕として〔嘗役〕をやっていた座頭・辰の市は、10年ほど前に盗賊〔須磨(すま)〕の音次郎の右腕だった浪人盗賊・青木源兵衛(40前後)と知り合った。
(参照: 〔須磨〕の音次郎の項 )
が、いまの辰の市は、盗みの世界からきっぱりと足を荒い、四谷・伝馬町の文房具屋〔玄祥堂〕で奥向き女中をしている15も年下で元女賊だったお峰(35,6歳)と、塩町1丁目の路地裏の小さな家で安穏に暮らしている。
そこへ、〔須磨〕の音次郎が病没後に一味を手にいれた青木源兵衛があらわれ、〔玄祥堂〕への押し込みの手引きを強要してきた。
年齢・容姿:50男。坊主頭。目はみえる。
生国:上方とおもわれるが、不明。
探索の発端:同心・細川峯太郎が、偶然に目をあけていた辰の市を見かけたために、火盗改メに見張られることになったが、辰の市は青木一味に脅迫されるや、ただちに旧友・〔小房〕の粂八へ相談をもちかけた。
それで、火盗改メの眼が青木一味へ向いた。
結末:捕縛のときに抵抗した青木源兵衛は、鬼平に斬られた。
青木一味に幽閉されていたお峰は無事に保護され、一切を〔小房〕の粂八に相談していた辰の市はお構いなし。
つぶやき:この篇の主題は、同心・細川峯太郎の再生・復帰の物語にあり、盗賊は脇役なのだが、それでも改心した辰の市という座頭を創造している。
『鬼平犯科帳』には、座頭が6人登場する。うち2人---文庫巻8[白と黒]の富の市、巻17[闇討ち]の文の市は盗みとは関係のないふつうの座頭である。
あと4人が盗みの世界にはまっている座頭だが、この篇の辰の市だけは足を洗った。
のこり3人の座頭は、彦の市(巻1[老盗の夢])、茂の市(巻13[一本眉])、徳の市(巻22[迷路])。
(参照: 座頭・彦の市の項)
(参照: 座頭・徳の市の項)
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