座頭(ざとう)・徳の市
『鬼平犯科帳』文庫巻22は、当シリーズの長篇第3作目 [迷路]である。盗賊方の重鎮は〔猫間(ねこま)〕の重兵衛で、サブが別の一味の首領〔法妙寺〕の九十郎。
(参考: 〔猫間〕の重兵衛の項)
(参考: 〔法妙寺〕の九十郎の項)
密偵では、〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵と〔玉村(たまむら)〕の弥吉のかつやくがいちじるしい。
(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項)
(参照: 〔玉村〕の弥吉の項)
その〔玉村〕の弥吉が、〔法妙寺〕の九十郎からえお盗めを助(す)けるように頼まれた。盗め先は、鉄砲洲の薬種屋〔笹田屋〕といわれて、明石橋の向こうをそれとなく見張っていると、座頭の徳の市が〔笹田屋〕から出てくるのを見かけた。徳の市は、按摩をしながら引きこみと〔甞役(なめやく)〕を兼ねていたのである。
徳の市は盲人をよそおって、南小田原町の中2階のある家へ女房と住んでいる。
明石橋(別名・寒橋)徳の市の家は西本願寺の手前
(〔『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
年齢・容姿:50前後。盲人をよそおっている。
生国:〔赤堀(あかぼり)〕の嘉兵衛との地縁から、伊勢国のどこかと推察。
(参照: 〔赤堀〕の嘉兵衛の項)
探索の発端:先に記したように、鉄砲洲の薬種屋〔笹田屋〕からと徳の市が出てくるところを屋吉が見かけた。
徳の市とは、〔赤堀〕の嘉兵衛の一味にいたときに、彼が目明きで、按摩に入った家の間取りから金蔵の場所や錠前の形まで読みとることを知っていた。
一方、〔小房〕の粂八が、尾行(つ)けていた女賊お松(27,8)が、徳の市の家へ入るのをつきとめた。
結末:〔猫間〕、〔法妙寺〕一味とも、全員捕縛。徳の市も同然。死罪であろう。
つぶやき:ストーリーの展開は、例によってあざやかなものである。同心・細川峯太郎の博打と浮気から幕があき、終わりは鬼平と〔猫間〕の十兵衛との対決となる。その間に、かつて逮捕した〔池尻〕の辰五郎がからむといったにぎやかさ。
こういう作家を、〔ページターナー〕---息もつかせずにページをめくらせる作品と呼ぶ。
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