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2005.02.11

〔藤坂(ふじさか)〕の重兵衛

『鬼平犯科帳』文庫巻14に収録の[尻毛の長右衛門]に、〔尻毛〕一味の最高幹部役としてちらっと登場。4か所に設けられている江戸の盗人宿のうち、浅草の宿を束ねている。

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(参照: 〔尻毛〕の長右衛門の項)

引きこみのおすみのほうからの誘いに、つい、できてしまった〔布目〕の半太郎が、お頭の長右衛門にそのことを報告・許しをえようとしかけた。が、長右衛門のほうから、年齢が30余も若い「おすみを嫁にしたいのだが---」と打ち明けられ、半太郎は切羽つまった。
そのとき、重兵衛が部屋へ入ってきたので、半太郎は救われるように引き下がることができた。[〔布目(ぬのめ)の半太郎]の項も照されたし)

年齢・容姿:中年。あとは記載されていない。
生国:三重県度会(とあらい)郡南島(なんとう)町の北、藤坂峠のあたりの出か?

探索の発端:本所・吉田町2丁目(現・石原4丁目)の薬種屋〔橋本屋〕へ引きこみとして入っていたおすみを見かけた女密偵おまさが、顔や体つきがおすみの母親お新とそっくりなのに疑念を抱き、鬼平へ伝えた。
〔橋本屋〕とおすみに見張りがつけられた。

結末:〔布目〕の半太郎が失踪し、代わりに〔橋本屋〕へのお盗めが中止になつたから急いで脱けだすようにと、おすみに告げにきた重兵衛が尾行され、浅草の盗人宿が急襲され、重兵衛ほかが捕まった。
(参照: 〔布目(ぬのめ)〕の半太郎 の項)

つぶやき:どちにしても結果は同じとおもうが、おすみにつなぎをつけるために、〔尻毛〕の長右衛門の右腕である〔藤坂〕の重兵衛がわざわざ出かけるというのも、いかにも軽々しいとおもう。

あるいは、おすみと一緒になることを望んでいた〔尻毛〕の長右衛門のこと、押し込みは中止、すぐに抜けだしてこい---という大事なつなぎだから、じかに重兵衛にいいつけたのかもしれない。

おすみの躰には泥鰌が100匹棲んでいるという。母ゆずりの躰ということもあろう。お新をものにしていた長右衛門だから、そのことを想像して、年齢差もなんのその、一緒になることをのぞんだのかも。
いや、池波さんもとんだ読者サービスを仕込んだものだ。安来の男でないものまでが、つられて、泥鰌すくいを試みることになるではないか。

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コメント

みみず1,000匹とか、泥鰌100匹とたとえられる名器のこと、そりゃあ、本で読んだり男衆のひそひそ話を耳にしたことはありますよ。

でもね、おんなは自分では実感のしようがないですもんね。

好いた同士となら、その瞬間、泥鰌がすんなりとうごいてくれるんじゃないんですか。

投稿: 裏店のおこん | 2005.02.11 10:14

尻毛の長右衛門も女を繋ぎ留めるのに大変ですね。
引き込みをやらせるのですからやっぱり関係を持たないと心配なのでしょうか、それとも単なる役得。
布目の半太郎は既に登場し、コメント済みですから省略。
藤坂の重兵衛についてはコメントの仕様が無いのでここではおまさの心うちを。
平蔵 「桜花は、まだ、残っているかえ?」
おまさ「いいえ、もう・・・・」
と、おまさの声が落ち着きを取り戻し、
   「もう、散ってしまいました」
この最後のセリフに含まれるおまさの心情が実に愛おしですね。
既に平蔵への気持ちは断ってる、けどやはり未練が、その未練をきっぱりと断つと自分に言い聞かせるつらい言葉ですね。
スペシャル番組でみせた以前と変わらぬおまさの姿が二重写しになりました。

投稿: 靖酔 | 2005.02.11 13:44

>おこんさん

いささか、きわどい話題ですが、先に仕掛けたのは池波さんですからね。

好みとしますと、みみずより、泥鰌のほうがまだましなようにもおもえますが。

なにせ、中学のころ、生物学に凝ってまして、教科外でみみずの解剖をやり、解剖図なんかも描いたものですから、みみずは食傷気味(関係なかったですね)。

>靖酔さん

おまさは、五郎蔵に添っているんではなかったですか?
なのに、いまだに鬼平を慕っていては、五郎蔵が救われません。

いや、靖酔さんが、おまさに、やさしすぎるのかも、ね。

投稿: ちゅうすけ | 2005.02.11 17:16

はじめまして。
Blog楽しいです。
食のサイトは見かけますが、盗人探索は中々ないですよね。
鬼平文庫巻14ですか、まだ完全制覇していません。
ここへ来てぷっと笑えるくらいになりたいですね。
あと、リンクも貼らせてください。

投稿: いくっち | 2005.02.11 23:58

〔いくっち〕さん

いらっしゃいました。

食の探索も、池波さんの足跡リサーチですが、盗人探索も、池波さんの取材旅行先しらべの一環のつもりです。

「泥棒の多い県は?」との質問を受けます。
「静岡県、山梨県、滋賀県、冨山県、新潟県---あたり、ですね」
と答えていますが、ほんとうは、家康、信長、謙信、信玄、浅井家、甲賀者---などの調査におもむいたときに収穫・記録した地名を、盗人の〔通り名〕に冠しているのですね。

リンク、ありがとうございます。
こちらからも張らせてください。

投稿: ちゅうすけ | 2005.02.12 03:47

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