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2005.05.21

〔尻毛(しりげ)〕の長右衛門

『鬼平犯科帳』文庫巻14に収められ、[尻毛の長右衛門]とその篇のタイトルにもなっている盗人一味の首領。元は本格派の〔蓑火〕の喜之助の下で修行しているので、筋の通った盗めをする。
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項)
片腕は〔藤坂(ふじさか)〕の重兵衛。
(参照: 〔藤坂〕の重兵衛の項)

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年齢・容姿:50をこえたばかり。手足も躰も毛むくじゃらで、耳の穴からも長い毛がはみだしている。
生国:美濃(みの)国方県郡(かたがたこうり)尻毛(しっけ)村(現・岐阜県岐阜市尻毛)。
岐阜市の西域、伊自良川下流の右岸。岐阜駅からは「尻毛(しっけ)橋をわたって町並みへ入る。
池波さんは、斉藤道三か織田信長、あるいは長久手の合戦時の羽柴秀吉を調べていて、この地名に達したか。
ついでに記すと、(しっけ)のいわれには、アイヌ語説と、湿気の多い土地説がある。

探索の発端:〔布目(ぬのめ)〕の半太郎の項に記したが、長右衛門が、妾だったお新のむすめ・おすみ(19歳)を、本所・吉田町2丁目の薬種問屋〔橋本屋〕へ引き込みに入れた。つなぎ役は半太郎(28歳)。
(参照: 引き込み女おすみの項)
(参照: 〔布目〕の半太郎の項)
そのおすみと半太郎ができてしまったはいいが、おすみが密偵おまさに見つかり、見張りがついた。
(参照: 密偵おまさの項)

いっぽう、〔尻毛(しりげ)〕一味の側では、長右衛門が父娘ほども年齢がへだたっているおすみを後妻にしたいと半太郎に告げていた。
聞いて半太郎は、一味を出て行く決心をする。

結末:出て行った半太郎のことで、長右衛門は〔橋本屋〕への押し込み計画を中止し、小舟で江戸から出ようとしたところを、鬼平に捕まった。

つぶやき:「尻毛(しっけ)」を訪ねるべく、岐阜の友人に電話を入れ、「遅すぎたようだよ。尻毛への電車線は、この4月1日で廃線になったよ」といわれた。
1時間に1本のバスをたよりに岐阜駅へ降り立った。あちこちバス停を尋ねまわって、ようやく1本/時間のバスに乗り込んだら、乗客はしばらく女子高校生と2人きり。これでは廃線になるのも無理はなかろうとおもった。
その代わりに、尻毛町へ入る「尻毛橋」は車の長蛇の列。

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伊自良(いじら)川に架かる尻毛橋

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かつての尻毛駅脇の閉鎖された踏み切り

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廃線で錆びた線路と標識もはずされたホーム

〔尻毛〕の長右衛門をめぐっては、『鬼平犯科帳』におけるコメディ役の意味について書きたかったのだが、廃線ショックに勝てなかった。

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コメント

布目の半太郎の時からこのストーリーには、哀しさと滑稽さを感じていました。
「鬼平犯科帳」におけるコメディ役につて是非伺いたかったです。
又の機会にお願いいたします。

先生がショックを受けられた廃線尻毛駅、標識は「尻毛(SIKKE)」でしたね。

珍しい名前なので、鉄道ファンには有名で、2005年t3月31日で廃線になりましたが、その5日前の日曜日には、名残を惜しむ鉄道ファンが早朝から目白押しだったそうです。

伊自良川に架かる尻毛鉄橋は撮影の名スポットらしく鉄橋を通過する電車の写真を何枚も見た事があります。
実際にご覧になり、いかがでしたか。

採算が取れないのでは仕方がないですが、ローカルな風景が次ぎ次の見られなくなるのは淋しいです。

投稿: みやこのお豊 | 2005.05.21 22:19

>みやこのお豊さん

>伊自良川に架かる尻毛鉄橋は撮影の名スポットらしく鉄橋を通過す>る電車の写真を何枚も見た事があります。
>実際にご覧になり、いかがでしたか。

いや、そこまで足を伸ばせませんでした、というより、そんな名所があるとは知りませんでした。
残念!

投稿: ちゅうすけ | 2005.05.22 10:41

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