〔桐生(きりゅう)〕の友七
『鬼平犯科帳』文庫巻20に所載の[怨恨]は、〔磯部(いそべ)〕の万吉(50がらみ)と浪人くずれの杉井鎌之助(40歳前後)が、互いの頼みごとを助(す)けあうストーリー展開だが、その万吉側の相棒が〔桐生(きりゅう)〕の友七である。
(参照: 〔磯部〕の万吉の項)
(参照: 浪人くずれ・杉井鎌之助の項)
〔磯部〕の万吉のたくらみは、弟の敵(かたき)ということにして〔今里(いまざと)〕の源蔵(51,2歳)を殺すことだった。
(参照: 〔今里〕の源蔵の項)
その源蔵が、湊稲荷の境内から出てきて、南八丁堀5丁目の煮売り酒屋〔信濃屋〕喜十(57歳)方へ入るのを、友七が見かけた。
(参照: 〔桑原〕の喜十の項)
万吉のいいつけで、友七は向いの旅籠〔山重〕から〔信濃屋〕を見張っている。
年齢・容姿:32,3歳。容姿の記述はない。気が短い。
生国:飛騨(ひだ)国大野郡(おおのこおり)桐生村(現・岐阜県高山市桐生町)。
このほかに、上野国山田郡桐生新町(現・群馬県桐生市本町)、近江国栗田郡桐生村(現・滋賀県大津市上田上桐生町)もあるが、ここは、池波さんが幾度が訪れている高山市とみたい。
それに三河・額田郡生まれとした〔磯部〕の万吉とも地縁も想像できる。
探索の発端:北千住で食売女と遊んだ密偵・鶴太郎が〔磯部〕の万吉と杉井鎌太郎を見かけ、〔山重〕まで尾行した。
結末:夜半、寝込んでいた3人は火盗改メに襲われて、万吉と友七は捕まり、抵抗した杉井は鬼平に長十手で打たれて失神した。
つぶやき:万吉の「弟の敵討ち」というのはつくりごとで、源蔵が仕組んだ駿府の呉服屋のお盗めで、万吉は1200両をひとり占めにして逃げた。
大井川をさかのぼった笠間の盗人宿で万吉に殺された3人の敵をとりたいのは源蔵のほうだった。
殺しの真相は、このシリーズに何話かある盗賊仲間の騙しあいだが、この篇は、〔信濃屋〕こと元盗賊の〔桑原〕の喜十と源蔵の義理、喜十とむかし馴染みの〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵との信頼ぶりをからめて、新味を出している。
(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項)
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