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2006.01.08

引き込み女おすみ

『鬼平犯科帳』文庫巻14に収められている[尻毛の長右衛門]と、タイトルにもなっている盗人一味の首領の情婦でもあった母親についで、引きこみもつとめることになったおすみである。
(参考: 〔尻毛〕の長右衛門の項)
(参照: 女賊お新の項)
引きこみ先は、本所吉田町2丁目の薬種問屋〔橋本屋〕。一味の連絡役は〔布目(ぬのめ)〕の半太郎(28歳)だが、2人はできてしまっている。いや、おすみのほうから、生娘の体を法恩寺裏の林で誘いをかけて半太郎に与えていた。
(参照: 〔布目〕の半太郎の項)
あとは、首領・長右衛門の許しを得るばかりである。
だが、そうは問屋がおろさなかった。躰の中泥鰌が100匹も棲んでいる名器を、母娘なんだから、おすみもお新から引き継いでいるにちがいないとふんだ長右衛門(51歳)が、おすみを後妻にしたいといいだしたのである。
生娘のしるしをいただいてしまった半太郎、一味に居残るわけにはいかないと、身を引くことにしたのだが--。

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年齢・容姿:19歳。低い鼻、への字形の唇、縮れれ毛、狆ころが髪を結っているよう。
生国:母親が美濃(みの)国のどこか(現・岐阜県)にある実家で産んだか。

探索の発端:薬種問屋〔橋本屋〕へ入ったおすみは、金蔵の錠前の蝋型もとっているし、屋敷内の間取りから家族・奉公人のあれこれまでしっかりと調べていた。
ところが、容貌が母親似だったばっかりに、女密偵おまさに見つかったしまった。お新の亭主の故・市之助がおまさの亡父の忠助と親しかったので、子どもごころにお新のことを覚えていたのである。

結末:おすみから半太郎、深川清澄町の霊雲門前に近い釣道具屋〔利根屋〕---〔尻毛〕一味の盗人宿---とたぐられて、〔蓑火〕ゆずりの本格派の長右衛門は、いさぎよくお縄をうけた。
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項)
おすみは半太郎の消息を聞きだすべく、半太郎の親代わり、妙義の笠町で旅籠をやっている万吉爺さんを訪ねたところを逮捕された。

つぶやき:事件が落着して、鬼平がおまさに「それにしても、あの、おすみは、死んだ半太郎がが初めての男だったというぞ。それも、おすみのほうから誘いをかけたそうな」
これに対して、おまさが応える。
「若い女には、だれしも、おすみのようなところがございます。ただ、それを意気地なく胸の底へしまいひこみ、黙っているだけのちがいなんでございますよ」
おまさの双眸が、きらりと光った。

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