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2005.11.13

〔火間虫(ひまむし)〕の虎次郎

『鬼平犯科帳』文庫巻14の[殿さま栄五郎]で、三崎坂下の法受寺門前で花屋を表の商売にしている〔口合人〕の〔鷹田(たかんだ)〕の平十へ、腕っぷしの強い流れづとめの助っ人を依頼したのが、畜生ばたらきをいとわない首領〔火間虫(ひまむし)〕の虎次郎である。
(参照: 〔鷹田〕の平十の項)
平十は、知り合いの〔馬蕗(うまぶき)〕の利平治が仲介した、浪人盗賊〔殿さま栄五郎〕になりすました鬼平を〔火間虫〕の虎次郎へ口合してしまう。
(参照: 〔殿さま〕栄五郎の項)

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年齢・容姿:年齢の記述はないが、45歳前後か。でっぷりと肥えた貫禄のある躰つき。
生国:不明の生国の代わりに、「通り名(呼び名)」の出典はわかっている。鳥山石燕『画図百鬼夜行』の〔火間虫入道〕であろう。
いくっちさんが〔火前坊〕権七のコメント欄に書き込んでくださったように、池波さんは、この書から〔蓑火〕〔狐火〕〔野槌」〔火前坊〕〔蛇骨〕などの「通り名(呼び名)」を得ている。
(参照: 〔火前坊〕権七の項)
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項)
(参照: 〔野槌〕の弥平の項)
『画図百鬼夜行』から、「火間虫入道」を引用。
c
画中の添書「[人生勤むにあり。つとむる時はとぼしからず]とてへり。生きて時に益なく、うかりうかりと間(ひま)をぬすみて一生をおくるものは、死してもその霊ひまむし夜入道となりて、灯の油をねぶり、人の夜作(よなべ)をさまたまたぐるとなん。今訛(あやま)りてヘマムシとよぶは、へとひと五音相通也」

探索の発端:鬼平が〔殿さま栄五郎〕になりすまして〔火間虫〕の虎次郎と会ったときから探索ははじまっている。

結末:「蓑火〕の喜之助のところへいっときいて、〔殿さま〕栄五郎を見知っていた〔五条(ごじょう)〕の増蔵のせいで、鬼平のたくらみはバレるが、方丈河岸の〔火間虫〕一味の盗人宿などが手入れをうけ、全員逮捕。死罪であろう。
(参照: 〔五条〕の増蔵の項)
〔鷹田〕の平十は入水自殺。

つぶやき:『剣客商売』文庫巻2の、[妖怪・小雨坊]も鳥山石燕『画図・百鬼夜行く』から採った異名である。小説では秋山小兵衛が購入した絵本となっている)。
池波さんがこの書や『古今妖怪拾遺』などから、多くを得ていることは間違いない。
宮部みゆきさんの『本所深川ふいき草紙』(新潮文庫)の[岸涯小僧〕も後書からの引用である。

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コメント

火間虫入道
だらだら怠けて面倒くさがってばかりいた人がなる妖怪。
夜なべをしている人のところに現れ、油を嘗め尽くしてしまう。火に関するところに出るからなのか、暇を持て余すからきている名前なのか。

投稿: いくっち | 2005.11.20 06:45

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