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2006.01.04

〔殿(との)さま〕栄五郎

『鬼平犯科帳』文庫巻14の[殿さま栄五郎]で、鬼平がその名をかたって凶悪な〔火間虫〕の虎次郎一味へ潜入しようとするが---。
(参照: 〔火間虫〕の虎次郎の項)
ことの起こりは、〔火間虫〕の使いで、〔長沼(ながぬま)〕の房吉が、谷中・法住寺の門前での花屋を隠れ蓑に〔口合人〕稼業をしている〔鷹田(たかんだ)の平十に、腕っぷしの強い助(す)けばたらきを依頼した。

(参照:〔鷹田の平十
(参照: 〔長沼〕の房吉の項)
〔口合人〕稼業15年にもおよんでいる平十の悩みがはじまる。〔火間虫〕一味の盗めは荒っぽい。それが気にいらねえ、のだ。
悩みきって不忍池ばたを歩いているとき、知りあってこのかた気のあった付きあいをつづけてきた〔馬蕗(うまぶき)〕の利平治に声をかけられた。
(参照: 〔馬蕗〕の利平治の項)
利平治に心あたりがあるという。利平治が推薦してきたのは、鬼平が化けた、〔殿(との)さま〕栄五郎という大物だった。

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年齢・容姿:45,6歳か。立派な顔だち。無口。何ともいえないほどやさしい目つき。
生国:備前(びぜん)国岡山(現・岡山県岡山市)の浪人あがり。かつて、鬼平があれこそ盗賊中の真の盗賊と折り紙をつけた〔蓑火(みのひ)〕の喜之助の軍師格だったが、〔蓑火〕が一味を解散してから、消息が絶えている。

探索の発端:これまでとは逆に、鬼平の仮装がばれるのは、かつていっとき〔蓑火〕ではたらいて〔殿さま〕栄五郎を見知っていた〔五條〕の増蔵に見破られた。
(参照: 〔五条〕の増蔵の項)
〔鷹田〕の平十が、なぜ偽者を口合いしたかと、〔火間虫〕一味の拷問されるが、平十としては知らないことなので白状できない。

結末:芝・方丈河岸の〔火間虫〕一味の盗人宿などが手入れをうけ、全員逮捕。死罪であろう。
〔鷹田〕の平十は入水自殺。

つぶやき:〔火間虫〕一味が、〔鷹田〕の平十の口を割らすために、女房のおりきを捉えにきたのを、待ち構えていた火盗改メが逮捕して、方丈河岸の盗人宿が知れる。
そのことを鬼平が予測して手くばりしていなかったら、平十夫婦にとって、鬼平はじつに危険な橋を渡ったことになった。

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コメント

「殿さま栄五郎」を読んでいつも思うのは、
いくらなんでも長官が自らが囮になるなんて、ということです。

真の盗人としての自責から方丈河岸で入水する
鷹田の平十も哀れですが、「馬蕗の利平治」の心中は地獄だったと思います。

このストーリーには重いテーマを感じています。

投稿: みやこのお豊 | 2006.01.04 20:50

>みやこのお豊さん

>いくらなんでも長官が自らが囮になるなんて---

同感です。
ただ、長い単立連載シリーズです。どうしてもアイデアが浮かばないときだってあったでしょう。

木村忠吾の、さむらい松五郎のそっくりさんも、安易なアイデアだとはおもいますが、一人の作家に150以上ものアイデアを要求するほうが、無謀かもしれませんね。

投稿: ちゅう | 2006.01.05 13:44

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