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2005.06.17

〔三河(そうご)〕の定右衛門

『鬼平犯科帳』文庫巻23は、ページのほとんどが長篇[炎の色]にあてられている。〔荒神(こうじん)〕のお夏(25歳)と密偵おまさの2人がヒロインである。
(参照: 〔荒神〕のお夏の項)
(参照: 女密偵おまさの項)

223

その〔荒神〕のお夏は、首領〔荒神〕の助太郎の隠し子で、女ながら2代目を継いでいる。彼女を一人前の盗人に仕込んだのが、上方がテリトリーで、助五郎の盟友の巨盗〔三河(そうご)〕の定右衛門なのである。

年齢・容姿:どちらも記載されていないが、ハイティーンのお夏を父親・助太郎からあずかって盗法を仕込んだとすると、去年没したときは50代そこそこだったろう。
生国:丹後(たんご)国加佐郡(かさこうり)三河(そうご)村(現・京都府加佐郡大江町三河)
舞鶴市の西、三河川流域の谷間。鬼退治の大江山連峰の麓。

探索の発端:〔三河(そうご)〕の定右衛門そのものは、昨年病没しているので、探索のやりようもない。
お夏と密偵おまさの出会いの経緯は、〔荒神〕のお夏の項に記してあるから、省略。
〔三河(そうご)〕の定右衛門のことをお夏がおまさに打ち明けるのは文庫p146 新装版p141。

結末:病没。50代と山家(やまが)育ちにしては若死にすぎる。日本海側の寒い土地育ちのせいで、塩分摂りすぎと心労による心臓発作か。

つぶやき:[炎の色]の続編ともいえる文庫巻24の未完の長篇[誘拐]で、池波さんは〔三河(そうご)〕の定右衛門の仕込み方、そしてお夏が性倒錯者になった経緯もあかす予定だったのではなかろうか。

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コメント

「三河」に、『鬼平犯科帳』では、(そうご)とルビが付されています。

それを西尾先生は見落とすことなく、(そうご)で探索なさっています。さすが鬼平研究のオニですね。感服しました。

教わったデータベース『旧高旧領』を確認したら(失礼!)、「三河」を(そうご)と読むところは、丹後の大江町しかありませんでした。

投稿: 文くばり丈太 | 2005.06.17 09:10

>文くばり丈太さん

『旧高旧領』をおたしかめくださったようで、ありがとうございます。

ぼくたちの年代になると、大江山脈ときくと、
「むかし、丹後の大江山---」
という童謡で、酒典童子をおぼえたものです。
池波さんも、きっとそうでしょう。

朝倉氏の取材か、峰山への文春講演会へ行って、大江連峰を眺めて、童謡を口ずさんだかも。

先日、近江の多賀町で〔大滝〕の取材を終え、はるか前方につらなる越前国の山々を遠謀したとき、ぼくは朝倉を取材している池波さんを偲びましたから。

投稿: ちゅうすけ | 2005.06.17 10:08

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