〔須坂(すざか)〕の峰蔵
『鬼平犯科帳』文庫巻14に収められている[さむらい松五郎]で、同心・木村忠吾を、さむらい松五郎こと〔網掛(あみかけ)〕の松五郎とまちがえて手下になりたがった、鍵開けが専門の盗人。
(参照: 〔網掛〕の松五郎の項)
年齢・容姿:40がらみ。ずんぐりした躰つき。
生国:信濃(しなの)国高井郡(たかいこうり)須坂村(現・長野県須坂市須坂)。
『角川地名大辞典』によると、地名は古代の墨坂神に由来し、墨坂(すみさか)が転訛したものと。
池波さんは、〔須坂〕にきちんと(すざか)とルビをふっている。訪れた証拠とみたい。
探索の発端:[五月闇]で〔強矢(すねや)〕の伊佐蔵に刺殺された密偵・伊三次の墓参に、威徳寺へ詣でたあと、帰りかけている同心・木村忠吾の肩をたたき、「網掛のお人」といった男がいた。〔湯屋谷(ゆやだに)〕の一味にいたときに見知ったのだといい、〔須坂(すさか)〕の峰蔵と名乗った。
(参照: 〔強矢〕の伊佐蔵の項)
(参照: 伊三次の項)
(参照: 〔湯屋谷〕の富右衛門の項)
この顛末を鬼平長官へ報告すると、すぐさま、峰蔵と、峰蔵が抜け出したがっている〔轆轤首(ろくろくび)〕の藤七一味に見張りの手がうたれた。
藤七一味への加担は、高崎に住む口会人の〔赤尾(あかお)〕の清兵衛の口ききだったという。
(参照: 〔赤尾〕の清兵衛の項)
結末:〔須坂〕の峰蔵が助(す)けることになっていた〔轆轤首(ろくろくび)〕の藤七一味は、断首。
小柳安五郎が捕らえたほんものの〔網掛〕の松五郎と、〔須坂〕の峰蔵の処置は書かれていない。
つぶやき:他人のそら似は、1人2役で演じる舞台の場合は早変わりの妙技が見どころになるが、小説の場合は嘘っぽさがいなめない。
しかし、前話が伊三次が刺殺される悲話だったので、ここは明るい物語で読み手の気分転換をはかろう、との、小説巧者・池波さんの配慮だったのだろう。
「須坂」出身の盗人には、もう一人---〔沼目(ぬまめ)〕の太四郎がいる。
(参照: 〔沼目〕の太四郎の項)
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コメント
ちゅうすけ様
コメントをいれていただいてありがとうございます。毎日更新とは本当にすごいなあっといつも思います。こちらを訪れるたびに鬼平にでてくるキャラクターたちはいろいろな個性をもっているのだな。とあらためて感動いたします。毎日の更新をディスプレイの向こうより応援しております。
投稿: impression | 2005.05.29 07:34
impressionさん
レスが遅れて申しわけ、ありませんでした。
ちょっとしたプロジェクトに手をとられておりまして。
毎日の更新は、コンテンツがコンテンツだけ、図書館で調べたり、小さいながらも書庫と呼んでいる部屋へこもったりで、時間ばかり浪費しております。
しかし、impressionさんのような、本格の鬼平ファンのお目にとまっているとおもうと、苦労も苦労でなくなりまして。
今後とも、よろしくご指導ください。
投稿: ちゅうすけ | 2005.06.01 14:11