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2005.07.29

〔猿塚(さるづか)〕のお千代

『鬼平犯科帳』文庫巻5で、初めてつかわれた[女賊(おんなぞく)]という呼称がびたりとはまる、〔猿塚(さるづか)〕のお千代が登場。
牛天神前の菓子舗〔井筒屋〕のおかみにおさまって、女躰をもとに、20数人の配下を束ねている。
東海道は岡部宿の小間物屋〔川口屋〕に、引退して寄宿している〔瀬音(せのと)〕の小兵衛だが、通りがかりの〔福住(ふくずみ)〕の専蔵から、隠し子の幸太郎が〔猿塚〕のお千代のなぐさみものになつているときいて、矢もたてもたまらず、江戸へやってきた。
(参照: 〔瀬音〕の小兵衛の項)
(参照:〔福住〕の専蔵の項)
205

年齢・容姿:40歳すぎ。見たところ28,9の若い女のような躰つき。小さな愛らしい白い手。かすれ気味の声。
生国:近江(おうみ)国犬上郡(いぬがみこうり)高宮(現・滋賀県彦根市高宮)。
10年前に逝ったとき、年齢が30歳近くも開いていたにもかかわらず夫といわれた男は、じつは〔猿塚(さるづか)の徳右衛門で、お千代の実父。お千代は2代目。
徳右衛門が牛天神前に菓子舗をかまえたのは15年前のことというから、お千代は近江の出生とみてもいいのではなかろうか。
ただし、猿塚の一つは、京都市伏見区竹田三ッ杭町の小学校のキャンパス内に建てられている。

探索の発端:浅草の浅草寺の境内で偶然に小兵衛と出会った密偵のおまさへ、小兵衛が〔猿塚(さるづか)〕のお千代と幸太郎の顛末を打ち明け、お千代の居所をつきとめてくれと頼んだことから、鬼平が動ききじめた。
(参照: 女密偵おまさの項)
おまさは鬼平の口ききで、お千代と幸太郎が逢引きをする池ノ端の出会茶屋〔ひしや〕に女中として住み込み、2人があらわれるのを待った。
4日後、帰っていくお千代の駕篭を尾行(つ)けたおまさは、お千代の〔ひしや〕を探りあてた。

結末:鬼平とおまさは、閉じこめられていた根岸の寮から幸太郎を救い出した。
火盗改メ19名が〔井筒屋〕へ打ち込んだとき、お千代はいさぎよく喉を突いて自裁していた。

つぶやき:〔猿塚(さるづか)〕のお千代にしても、〔掻掘(かいぼり)〕のおけいにしても、京都の女盗賊おたかにしても、40すぎでハイティーンか20代の男性を迷わせるだけの色香をただよわせている。
(参照: 〔掻掘〕のおけいの項)
(参照: 女盗おたかの項)
池波さんが、若い男性読者の憧憬を察してのことか。もしやして、世の年増女性の心の奥底に秘めたひそやかな願望のほうかも。

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コメント

 若い男が年上の女性に憧れることは自然なのでは?

 猿塚のお千代は中年男性を誘惑したのでしょうか?

 巻の5を再checkしなくては。

投稿: 大島の章 | 2005.07.29 23:46

店の見取り図を幸太郎から貰い、用済みとな

った猿塚のお千代に手下が幸太郎のことを

聞いたところ、「殺すさ」の一頃、体を与えた

のも方便だった、こんな現在、女がいるかなと

思いました。

投稿: edoaruki | 2005.07.30 08:13

>大島の章さん

>猿塚のお千代は中年男性を誘惑したのでしょうか?

番頭・勝四郎も、三上浪人ほかも年に1度ほど抱かせてもらつているとのセリフがありますから、お千代は、その躰をエサにして、一味をあやつっていたのでしょう。

>edoarukiさん

>体を与えたのも方便だった、こんな現在、女がいるかなと思いました。

テレビのオープニングのセリフではありませんが、
「いつの時代にも悪女ははびこる」
いるでしょうね。ただ、出逢いたくはありませんね。

投稿: ちゅうすけ | 2005.07.30 16:47

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