奈々という乙女(5)
3合(550ml)ほども呑み、肴もけっこうつまんだ奈々(なな 16歳)が、
「おいしかった、おもろかった。ご馳走さんでした。長谷川のおっちゃ---おじさま、里貴おばちゃん、おやすみ」
腰丈の寝衣のまま、脱いだ着物をかえて2階へ引きあげたのは、五ッ(午後8時)ちょっと前であった。
器類を流しの桶へつけたままで、里貴(りき 39歳)が寝室へ行灯(あんどん)を移し、いつものように芯をあげて明るくした。
「豪快な子だな」
平蔵(38歳)が横になりながらささやくと、
「豪快すぎます。銕(てつ)さまのほうを向いて素裸になり、着替えるなんて---」
「まだ、子ども気分が抜けないのであろうよ。うちの清(きよ 8歳)も、風呂あがりのとき素裸で廊下をあるいておるぞ」
「8歳ではありません。倍の16歳です。月のものも1年前からはじまっています」
添い寝し、
「銕さまが脚の長さ計りで、奈々の秘所へ手の甲をおあてになったとき、息がとまりました」
「湯帰りにしては冷やっこかったぞ」
「私のは---?」
「このように燃えておった」
「う、ふふふ---」
「里貴のほうが明らかに勝っておったことが、もう2つあった」
「なんでしょう?」
「上つき」
「好女(こうじょ)の条件の一つでした。2つ目は---」
「ここの絹糸の寸法よ。奈々のは生えかかり。里貴のは、摩(す)りあいで細くなり、しなやか」
「もっと摩りあい、うんとしなやかにしてくださいませ」
若い奈々の出現が39歳の里貴に火をつけたらしく、念入りの摩りあいで果てた。
「一昨年の与板藩内への探りもののようなお頼まれごとはございませんか?」
「路銀は頼んだ藩持ちで、前後にお忍びの泊まりをはさむ---というのか?」
「嶋田宿のときは、池上での一泊だけでしたから---」
【参照】2011年3月5日~[与板への旅] (4) (5) (18) (19)
2011年4月22日[古川薬師堂] (2)
2011年7月9日~[奈々という乙女] (1) (2) (3) (4) (6) (7) (8)
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