辰蔵の射術(3)
「それとなく確かめたら、辰蔵(たつぞう 13歳)が、自分で洗い、自室に干していることがあるようでございます」
床の中で、久栄(ひさえ 30歳)が太股の茂みを平蔵(へいぞう 37歳) の腰へすりつけながら洩らした。
4人の子を産み、みっちりと肉がついてきた尻をなぜてやりながら、
「塾の悪たちに、あぶな絵でも見せられたかな---」
「そんなものを塾へしのばせてくる子がいるのでございますか?」
「久栄は、ここへ嫁入るときに、母ごからそっと渡されなかったかな?」
「それとこれとは別でございます」
指で平蔵のものをつまみ、唇を首筋につけた。
「跡をつけるなよ、出仕できなくなるからな---それを、まだ、隠しもっているのか?」
「初(はつ 10歳)と清(きよ 7歳)の嫁入りに持たせねばなりませぬゆえ」
「見せてみよ」
「ご覧になるより、なさったほうがおよろしいのでは---?」
「お互い、ときめかなくなったものよ---はっ、ははは」
「実のほうが、よほどにみだらで、ようございます。うっ、ふふふ」
「そのとおり---}
みだらといわれ、ちらっと嶋田宿の本陣の若女将・お三津(みつ 22歳)のあられもない姿態がうかんだ。
【参照】2011,年5月14日[本陣・〔中尾〕の若女将お三津] (7)
「辰蔵も、もう、おんなを抱くことを夢みる齢ごろとおもったほうがよろしいので゛ざいましょうか?」
「人によって早い遅いの差はあろうゆえ、いちがいにはいえぬが、あぶな絵を見れば、挙立はしよう」
「殿さまは、おいくつで---?」
「いくつとだったおもう?」
「深大寺(じんだいじ)でお目にはかかったとき、私は16歳でございました」
【参照】2008年9月8日[〔中畑(なかばたけ)〕のお竜] (2)
「清らかなむすめであった---」
「食指がうごきませぬでしたか?」
「動いたからこそ、こうして寄りそって寝ておる」
「ふっ、ふふふ。挙立しましたか?」
「そなたは裸ではなかった---。はっははは」
平蔵の指が、まさぐりはじめた。
久栄もつかんでいた。
「辰蔵は、殿さまのお子です。晩熟(おくて)であるはずはございませぬ」
「申したな---」
辰蔵が夢の中で抱いていた相手のことを知ったら、平蔵も久栄も、あわて、驚いたであろう。
(磯田湖竜斎 部分 『芸術新潮』2003年新年号)
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