若い獅子たちの興奮
町飛脚による回状を受けとった面々が、八ッ(午前10時)に東深川・冬木町寺裏の茶寮〔季四〕に顔を揃えた。
平蔵(へいぞう 37歳)の梅雨前の、非番の日であった。
〔箱根屋〕の主(あるじ)で、[化粧(けわい)読みうり]の板元の権七(こんしち 50歳)。
同じく[読みうり]の編集者・〔耳より〕の紋次(もんじ 39歳)。
〔音羽(おとわ)〕の元締・重右衛門の内儀のお多美(たみ 41歳)。着付けのお師匠さん。
同・嫡男の祇右衛門(ぎえもん 20歳)
同・修行中で、嶋田の元締・〔扇屋〕の万次郎(まんじろう 51歳)の息子・千太郎(せんたろう 25歳)。
〔愛宕下(あたごした〕の嫡男・伸太郎(しんたろう 32歳)。
浅草・今戸の〔木賊(とくさ)〕の今助(いますけ 35歳)。
品川一帯の元締の長男の〔馬場(ばんば)〕の五左次(いさじ 22歳)。
日本橋の白粉問屋〔福田屋〕の化粧師・お勝(かつ 41歳)。
顔がそろったところで、権七が席につくようにすすめた。
その声を待っていたかのように、お多美が、上座に3枚並んでいる座布団の左席につき、右席に権七を招いた。
真ん中は空いたままであった。
しばらくゆずりあっていたが、左の列のもっとも上座に近い席に今助が座り、その隣に儀右衛門、そしてお勝。
お勝のうしろに、お乃舞(のぶ 23歳)。
上座の右の列には、ー紋次、伸太郎、五左次、千太郎の順。
つき添ってきていた小頭やその代人は、それぞの組のうしろにひかえた
今日、初めて顔あわせした者もいるのに、それぞれが自分の格を自覚していることを驚嘆していた平蔵を、お多美が上座の真ん中の席へ手招きした。
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