〔化粧(けわい)読みうり〕の別刷り(3)
(『医心方 第二十八 房内編』の写本をのぞいたのは、井上立泉先生から拝借したものであった。あれから、もう6年が過ぎた)
平蔵(へいぞう 40歳)は寝間で、そのときのことを反芻していた。
拝借をおもいついたのには、いまは故人になってしまっている里貴(りき 35歳=当時)がからんでいた。
【参照】20101216~[医学館・多紀(たき)家] (5) (6)
(そういえば、今宵、お三津(みつ 25歳)と再演した櫓炬燵(やぐらごたつ)を利用した性戯も『房内編』でおぼえたような気がする)
お三津はうっかり、
「これだけは、平さまとのときだけにとっておいています」
男がいることをつぶやいてしまったが、恍惚の姿態(てい)は3年前と変わらなかった。
『房内編』をどんな形で板行するか。
男の精を強くする薬、おんなの性感を昂(たか)める丸薬か塗り薬とともに売ることにすれば、元締たちの口銭がふくらむから、合意は容易であろう。
栗の調合、製造も躋寿館(せいじゅかん)の多紀安長元簡(もとやす 31歳)に一任するとし、〔耳より〕の紋次(もんじ)には、いま隠れた人気のあぶな絵師を起用するようにいっておこう。
これは、〔化粧(けわい)読みうり〕のようにつづきを考えてはならぬ。
一度きりで、刷り数も限定する。
そうしないと、『医心方』の半井(なからい)一族から幕府へ抗議がくるであろう。
また、刷り部数を限定することで、噂がうわさを呼び、風評のひろがりの輪が大きくなろう。
元締衆には、20冊ほど手元へ秘蔵しておき、1冊ずつ廻り貸し本屋へ高値でわたすように知恵をつけておこう。
(
われも20冊ほどのけておき、営内の要路向きへ進呈することにするか。いや、そういうことから足をすくわれるのだ。われはかかわりない体(てい)に徹するのだ)
元締衆へも、20冊のたかのしれた儲けなどより、あとを引く薬種(くすりだね)のほうの利益こそ、ほんものの儲けであることを、明日ははっきりといってきかせよう。
題簽(だいせん)は、
「おんなを喜悦させつくす」
「おんなが忘我の歓喜jに」
「さらなる高みに」
「玉門を敲く秘法}
(櫓炬燵のお三津はどううめいたか?)
「もっと乱れさせて」
「そこ、初めて」
「もう、だめ」
「頭の中、まっ白」
「あ、失神するぅ」
そうだ、「失神までの」
(ばかばかしい、1000石取りの旗本がかんがえることか)
ちゅうすけ「平蔵さん。あなたの感慨もわかるけど、おつきあいしているレポーターのぼくの立場にもなってみてよ」
平蔵「ちゅうすけさんがお三津を再登場させたのがまずかった」
ちゅうすけ「お三津ねえ。三木忠太夫忠任の素性を調べていたら、置塩城がらみで登場させざるをえなかったのさ」
平蔵「秀吉公は、置塩城を解体し、木材や石垣で姫路城を築いているなあ」
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