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2011.08.27

辰蔵と月輪尼(がちりんに)(8)

「うちがお訪ねしましたんは、ややを産みおとすこと、ご容認いただけんのかどうかの一点どす」
祖母・(たえ 59歳)に双眸(りょうめ)をすえつけ、月輪尼(がちりんに)が問いかけた。
さすがに長谷寺で修験を積んできているだけあり、ふだんの施療のおんなたちにみせる柔和さはなかった。

「ややは、おんな独りではつくれられしまへん。殿方の愛液をうけるよっさずかれます,ねん。その愛液を頂戴させてくれはるお方に、うちは(たっ)はんをえらびましたん。育てるおあしのことやおへん。よい種のことをいうてます」

久栄(ひさえ 32歳)が受けた。
月輪尼さま。長谷川家辰蔵も産んでほしいとお願いしましたなら、尼さまはそのまま月が満ちるまで、庵でお過ごしになるお考えでございましょうか? 護持院側が黙認してくれましょうか?」

平蔵が割って入った。
「待て。まず、決められることから決めていこう。辰蔵。産んでほしいか?」
「はい。2人でつくったややですから---」

久栄はどうじゃ?」
「15歳の子が産ませたという上っ方やお歴々の覚えがそこなわれなければ---」

「お婆は---?」
「継(つ)ぎ木の長谷川家の隠れた伝統をよくぞまもってくれたと、をほめてやるわい」

「最後にわれだが、まず、辰蔵に訊きたい。比丘尼と祝言をあげる気持ちはあるか?」
「------」

たまらず、月輪尼が口をはさんだ。
「うちは、はんと夫婦(めおと)になる気ぃはおへん。気も躰もおうた友だちとして、末なごう、おつきあいしていきたい、おもぅてます」

「拙が家督するまで、待ってくれるならば、ともに生きたいものです」
「あ、はははは。われの死を待っておるのじゃな---?」

辰蔵が少年らしく首をちぢめると、月輪尼が姉さん女房然と、
長谷川さま。はんは、父ごに早く隠居していただいて、お好きなことに歳月をあててほしぃ、孝行をいうてはるんどす」

「奇特な気持ち、ありがたくいただいておくが、月輪尼どの。ややのことは、本山にしれれば姦淫の破戒ということで追放になるのではござらぬか?」
「実家の力もおよばへんでひょ」

「では、ことはすべて内密に運ぶのが最良とおもわれる」
婆が、
「比丘尼さんのその衣装だと、7ヶ月までは隠しおうせるな。孕み8ヶ月から産み月までの2ヶ月のあいだ身を隠し、なにくわぬ顔で庵へ戻る」
「妙案だ。実現方を考えてみよう」

「やや---は?」
長谷川家の子としてとどける」
「あ---」
参照】2011年08月20日~[辰蔵と月輪尼(がちりんに)] () () () () () () () (


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