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2011.06.10

辰蔵の射術(7)

辰蔵(たつぞう 13歳)が、明日の丹而(にじ 12歳)との密会のときの科白(せりふ)をあれこれ練って眠れずにいたころ、平蔵(へいぞう 37歳)は寝床に久栄(ひさえ 30歳)とともにいた。

布施うじのむすめごが、辰蔵に気があったという件だがな---うふ、ふふふ」
「なんでございます、その含み笑いは---」

丹而(にじ)とかいったが、12歳とかいうことであったぞ」
「色恋にかけては、12歳なら、もうりっぱなおんなでございます。おまささんのことでお分かりでございしましょう?」
おまさ、のう。久栄のことを妬いておったようだが、いま、どうしておるかのう?」
おまささんは4つ;齢下でしたから、いまは26歳---どこぞの男とこうして---お妬けになりますか?」

「なにをいいだすやら---そこもとに4人ものややを渡したというのに」
「さ、も一人くださいませ」

男とおんなの性感を高めるための閨(ねや)でのじゃれあいやまさぐりあいは、何歳になっても他愛ないし、むかしも今も罪がない。

翌日。

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(牛込神楽坂 坂上に毘沙門堂
『江戸名所図会 塗り絵:ちゅうすけ)

神楽坂上の毘沙門天の堂前で、しゃがんで手をあわせている丹而の肩に、辰蔵がそった触れた。
びくついてふり向いた丹而に笑顔をみせた辰蔵の手は、離れなかった。
辰蔵のその手の甲に丹而の掌が重なった。

初めての愛撫のふれあいであった。

約をとりつけておいた茶店へ2人が並んで入ると、婆が皺の多い目を細め、
「どこかの後家さんかとおもったら---。ままごとでもすっかね」
辰蔵の背中をどんとぶった。

「1刻(2時間)ほど、2人だけで話しあいたい」
辰蔵がすばやく小粒をにぎらせた。

「1刻といわず、2刻でも3刻でも話しあっとくれ---}
婆はほくほくで、気前のいいところを見せた。
さすがに人生に苔が生えている---一度ですむずがないとふんだのであった。

土間とのあいだの障子がしめられ、2人の世界になっても、どうしていいかわからず、ただ、手をとって瞶(みつめ)あっているだけであった。

いや、辰蔵は、唇をあわせあうことはあぶな絵を見てしっていた。
下腹をあわせることも覚えていたといえぱいえた。
昨夜、寝床のなかで空想しなかったといえばうそになる。
しかし、幼く清純な丹而を目の前にしていると、そんな所業はとてもできなかった。

と、丹而の瞼から、みるみる大粒の涙がこぼれはじめた。
「おお---どうなされた?」
婆の耳に入っては---と丹而の名を呼ばないだけの分別はあった。

「たつ---」
辰蔵さまといいかけたので、手をひっぱり寄せ、口を指でふさぎ、耳元で、
「名をいってはいけない。素性がしれる」
低くささやいた。

辰蔵に抱かれ仰向いたままの丹而がうなずき、辰蔵の首に腕をまわし、口を寄せた。
おもわず唇をあわせたが、丹而は唇を半びらきにしたままで、辰蔵も舌でじゃれあうことまではしらず、ただ重ねているだけであった。

14歳の銕三郎(てつさぶろ)が、三島宿のお芙佐(ふさ 25歳)と同衾したときには、若後家であったおんなのほうから舌を入れまさぐってきたので、銕三郎もたちどころに察した。
そればかりか、お芙佐はそのあと、乳首を銕三郎にふくませ、
「ややが母親のものを吸うように、舌をつかい、やさしくなぶって---」

唇に触れ、相手の息を感じているだけで、辰蔵のものは硬直していた。
しかし、丹而は、そのことの意味をしらなかった。

袖の脇の開きから、辰蔵の指が忍んでき、乳首をつままれたとき、その初めての感触に、気を失いそうになった。
おもわず、しがみつき、支えきれなくなった辰蔵が倒れた。
丹而も転がり、すそが割れた。

そのうえに辰蔵がかぶさり、指が、ふくらみの小さい乳房を静かになぶりつづけた。

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コメント

初めてのデートでの未熟の接しあい---いまの子たちの目でみてはいけないのですね。
しかし、13才と12才---おまさは呑み屋の娘だけにませていたんでしょうね。

投稿: 文くばりの丈太 | 2011.06.10 05:38

『犯科帳』で読むかぎり、おもさは江戸育ちの子らしく、早熟だったようですね。
もっとも、いまの東京の子ほどではなかったかもしれませんが。

投稿: ちゅうすけ | 2011.06.12 14:22

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