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2006.06.10

現代語訳『江戸時代制度の研究』火附盗賊改(3)

  第六節 火附盗賊改 (承前)

(与力・同心の職掌について)
・頭付-----組頭の秘書役
・役所詰
・召捕方・廻方
        (注・与力と同心で10人ほど)
・雑物掛---雑品一切の保管と処分、過料の取調べとその処分、
        その帳簿つけ。
・書役-----記録・報告書づくり。
・溜勘定掛-会計をつかさどる。
・差紙使---呼出状づくりと配布手配。
・届廻-----権門勢家やそのほか依頼されている家宅を日々分担し
                    て巡回。

召捕方・廻方は、与力・同心ともに平素は袴をつけることなく、着流しでその巡察に携わったという。
(注・町奉行所の定町廻り同心は、黄八丈の着流しに黒羽織の裾を巻きこんでいたが、火盗改メの廻方は、テリレビの鬼平=中村吉右衛門丈の町廻り姿のように、袴も羽織もなしの着流し)。

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廻方は、この巡回を「先訊(さきたずね)」といい、市中の人びとがとかく群がり集まる場所を臨監し、あるいはまた広く関八州を巡行して、盗賊考察の任にあたった。

火盗改メのお頭はもとより、与力・同心は、毎年の大晦日には、とくに終夜を警戒し、市内の保安に備え、初日の出を高輪や深川の海で迎えてから帰宅するのを常としたので、お頭の年頭賀正のための登城は、二日と定められていた。

火盗改メは、本役・加役ともに、当初は役料はなかったが、享保4年(1719)以降、役扶秩40口を支給されるようになった。
文久2年(1862)に専職としたときに役高1500俵、役扶秩60口とした。
翌3年7月、さらに役扶持を100口とした。
(注・専職の役高1500俵は、先手組頭の格が1500石なので、これは実質1500俵なので、従前と大差ない。役扶秩の1口は1日に玄米5合。米1升が100文なら、40口は2000文。1両は正規には4000文なので、1日2分=半両にあたるが、これで捕らえて仮牢へ入れた容疑者・犯人の食事や牢番の小者の給金までもまかなった)。

火盗改メの官位は先手の組頭が叙される布衣(ほい)だが、先手組頭の上席に座し、初めは若年寄の所管であったが、のち(幕末には)、老中に所属し、持頭の上席に列した。

火盗改メを勤め終わるとその多くは、遠国(おんごく)奉行、下三奉行、持頭、西丸留守居などに栄転した。
(注・下三奉行については未詳。要するに、番方(ばんかた 武官系)から役方(やくかた 行政官系)へ転じて出世する)。

与力は秩禄200石より現米80石で、享保4年(1719)2月以降、役扶秩20口を支給されるようになったが、文久2年12月からはさらに10人扶秩を増された。
(注・長谷川平蔵のころは、役扶秩20口。1口を50文とすると、与力1人あたり1日1000文。月に6両2分)。

同心は30俵2人扶秩であったが、享保4年から役扶秩3口を支給されるようになった。(少略)。

この職、町奉行に次いで市民の上に威権があった。
この職に任じられて英才をもってその著名が伝わっているもの、
長谷川平蔵宣以(のぶため)
中山勘解由直---(長谷川平蔵の約150年前、寛永15年
           (1638)から正保2年(1645)まで任にあ
            った)。
太田運八郎資統(すけのり)---3000石。太田道潅の支流。
            父・資同(すけあつ)は、平蔵が本役の時
            に助役を勤め、平蔵の人柄を上に誹誹し
            たが、この仁の事跡は未詳。
            また、当書は資経としているが、諸資料
            から、資統の誤記と推察)。

警視総監岡喜七郎(民権家として知られた前報知新聞主筆岡敬孝の養子)は、この組同心の家系から出ている。
(了)。

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コメント

こんな素晴らしい資料があるなんて、全然知りませんでした。
池波さんの「鬼平犯科帳」創作に多大な貢献をしてますね。

これを現代語訳にしてくださったので、わかりやすくすっと
頭に入ります。

独り占めするのはおしいです。多くの方に読んでいただきたい資料です。

投稿: みやこのお豊 | 2006.06.12 23:51

池波さんは、文庫巻3ら「あとがきに代えて」で、本書に触れています。

投稿: ちゅうすけ | 2006.06.13 14:56

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