火事場への出役の衣装
父の長谷川平蔵宣雄の、目黒・行人坂の放火犯逮捕の項に引用した『風俗画報』(明治32年1月25日号)の前号---明治31年12月25日号[江戸の花・上編]の表紙絵は、もしかしたら、火事場へ出ばった火盗改メの組頭かしらん、とおもってみた。
『風俗画報』明治31年12月25号表紙
平蔵宣以(のぶため)はしかし、松平左金吾定寅との議論で、「火事場への出役のときは陣笠」といいきっている。
事件現場へ出役している陣笠姿の中村吉右衛門丈は、しょっちゅう目にしている。
表紙絵の騎馬の幕臣は火事頭巾である。これは、町奉行の火事装束。
九耀の紋所というと、田沼意次もそうだったが、かれは町奉行はしていない。安政5年(1858)から5年間、北の町奉行を勤めた石谷(いしがい)因幡守穆清かなあ。
火事場の整理にあたる火盗改メが、家紋を描いた高張提灯を掲げる姿だけでも、この表紙絵から連想していただきたい。
平蔵宣以の高張提灯のことは、
https://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=11760179&blog_id=75545
に紹介している。
『風俗画報』には、火事についてのいろいろな記事が載っている。
池波さんは、「ぼくは火事が嫌いでね。火事の描写って、むずかしいんだよ」といったが、たしかに、この絵の状況を文章で表現するのはむずかしい。
『風俗画報』明治31年12月25日号
風のうなり、火炎の響き、逃げ惑う群集の阿鼻叫喚、火消したちの勇み声、制止する役人たちの叱声---音だけでもこれだ。さらには色の描写や時の経過と、よほどの筆力でないと描ききれまい。
火事は江戸の花であり、火盗改メは、町火消しとともに、火事場の主役でもあったのだ。
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