« 同心・加賀美千蔵(5) | トップページ | 命婦(みょうぶ)、越中さん »

2009.09.18

同心・加賀美千蔵(6)

「どうであったな、東町の同心衆は---?」
表の役所からさがってきた父・平蔵宣雄(のぶお 54歳)が訊いた。

加賀美どのの祖は、武田勝頼(かつより)公の側近であった跡部(あとべ)尾張守勝資(かつすけ 1547~1582)に愛想をつかして、京へひそんだ仁だそうです」
銕三郎(てつさぶろう 27歳)の受け売りに、宣雄は、
(てつ)。ものごとを片側からからのみ見てはならぬ」

戦前に出た平凡社『日本人名大事典』は、『甲陽軍鑑』の記述を参考にしたか、跡部勝資について、

戦国時代の武人。大炊助と称し、武田信玄に仕へて、その侍大将となる。信玄の歿後その子勝頼Iに事へしも、長坂釣閑と共に専権の行あり。ために誠忠の士多く勝頼を離れたといふ。

徳川の陣営にはいった跡部姓は、『寛政譜』には7家が収録されている。

太田 亮著・丹羽基ニ編『新編姓氏家系辞書』(秋田書店)は、

阿刀部(アトベ)氏 信濃【清和源氏、小笠原伴野氏族】又跡部とも書く。信濃阿刀部の後裔だが伴野時長の子長朝が阿刀武を称してから、系を小笠原に引くを常とする。
尊卑分脈に「小笠原長清-伴野時長-長朝(号阿刀部)-泰朝-時朝」と見える。
和名抄小県郡に跡部郷を載せているが、この氏は南佐久郡野沢町大字跡部を本拠とすると云う。

_80

跡部(アトベ)氏 信濃、甲斐【清和源氏、小笠原伴野氏族】前条の阿刀部氏の跡である。行忠より系がある。寛政譜に七家を載せる。家紋松皮菱(右図)。

また、近時は、『甲陽軍鑑』の呪縛から離れた評価が行われるようになってきている。、

参考】[跡部勝資]

おかしなことに(---といっても、おなじ小笠原流れなので、あたりまえかもしれないが---)加賀美一族の家紋も〔松皮菱〕である。

ふたたび『太田 亮博士著・丹羽基ニ編『新編姓氏家系辞書』から---。

加賀美(カガミ)氏 甲斐【百済帰化族か】美濃各務勝の一族中巨摩郡に移住して各務という地名を生じ、後に加賀美と云った。
甲州で大いに栄えたが、遠光が武田氏より出て此の氏名を冒したので全族が源氏を称している。
寛政譜ではニ家を記載。家紋中太松皮菱。割菱、五七梧桐、王文字。

加賀美(カガミ)氏 甲斐【成和源氏 武田氏族】前条氏名を冒したもの。
尊卑分脈に「義清-清光-遠光(信濃守、加賀美二郎)-長清-(加賀美小二郎)-長経」とあり、また「長清の弟光清(加賀美二郎)」と見え、成和源氏図には、「猶遠光-経光、加賀美四郎」と見える。武田系図に「義清-遠光(加賀美次郎)とあるのは誤りであろう。

6_150
五味文彦・本郷和人編『現代語訳 吾妻鑑』(吉川弘文館)は、足かけ5年がかり、全16巻、歴史学徒による詳細な注が有用という壮大な企画で、これまでのところ第6巻まで刊行されている。

同シリーズを杜撰ながらあたってみたところ。加賀美長清小笠原二郎)の名が4ヶ所、遠光(とうみつ)が1回現れているが、事蹟の記述はない。

それでウェブをあたってみた

参考】[加賀美遠光
[加賀美遠光館跡] http://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/site/page/info/bunkazai/shi/shiseki/kagami/
[鬼丸智彦さんのHP] http://www7b.biglobe.ne.jp/~onimaru/index.html
 


       ★     ★     ★


[同心・加賀美千蔵] () () () () (

|

« 同心・加賀美千蔵(5) | トップページ | 命婦(みょうぶ)、越中さん »

075その他の与力・同心」カテゴリの記事

コメント

わぁー、すごい! ちょい役の加賀美同心だけでも、これだけの調査の上、登場しているんですね。たいへんな調査力。
私なんか、加賀美という字をみたら、かつてのNHKの加賀美幸子アナを思いうかべて、そうか、あの方ご主人の先祖は甲州の人か、くらいしか連想しませんけど。お恥ずかしい。

投稿: tomo | 2009.09.19 06:15

>tomi さん
このブログは、日時が経っても、内容が古くならないように記事にしているつもりです。
『鬼平犯科帳』は、ホームズもののように、あとあとまで愛好読者がうまれるでしょうし、長谷川平蔵は実在した幕臣なので、これからあとも史料がでてくる可能性があります。
それで、あとになって恥をかかないように、史実はたしかめておかねば---と、おもっているんですが、なにせ、浅学菲才、にわか仕込みの知識なもので、いつも小さくなっています。

投稿: ちゅうすけ | 2009.09.19 07:27

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 同心・加賀美千蔵(5) | トップページ | 命婦(みょうぶ)、越中さん »