〔山彦(やまびこ)〕の徳次郎
『鬼平犯科帳』文庫巻4に収録されている[おみね徳次郎]は、芝居の[お染久松][お初徳兵衛]など、女性のほうをあたまにおく習慣にしたがって、〔おみね〕が前におかれている。以後、〔お熊と茂平](笑)、[おかね新五郎]、[おしま金三郎]と同巧のものがある。
(参照: 女賊おみねの項)
おみねが巨盗 〔法楽寺(ほうらくじ)〕の直右衛門の配下の女賊であることを知らないで、徳次郎はおみねとできてしまう。おみねの閨(ねや)での狂態にすっかり参っている。
一方、おみねは、まわり髪結いを表の仕事にしている徳次郎が、〔山彦(やまびこ)〕を「通り名(呼び名)」にした、兇賊〔網切(あみきり)〕の甚五郎一味の引きこみと錠前外しの腕ききと承知したうえでの同棲だった。
(参照: 〔法楽寺(ほうらくじ)〕の直右衛門の項)
(参照: 〔網切(あみきり)〕の甚五郎の項 )
年齢・容姿:年齢は書かれていないが、30歳前後か。色白の可愛い顔、小肥り。
生国:肥前(ひぜん)国松浦郡(まつらこうり)山彦(やまひこ)村(現・佐賀県東松浦郡北波多村大字山彦)
鎌倉岳と日岳にはさまれた谷間なので、山びこに由来する名と。聖典のルビは(やまびこ)。池波さんは平戸へ足をふみいれたことがある。
探索の発端:四谷の全勝寺の前で、おまさが幼馴染のおみねが出会ったことから、見張られて、〔法楽寺〕の直右衛門一味の、千駄ヶ谷の仙寿院前の茶店と、浅草新堀の浄念寺門前の盗っ人宿がつきとめられた。
(参照: 女密偵おまさの項)
(参照: 女賊おみねの項)
結末:浄念寺門前の茶屋〔ひしや〕を急襲した火盗改メ17名は、〔法楽寺〕一味の6名を捕らえたが、おまさとの約束により、鬼平はおみねを特別のはからいにした。
付記:鳥山石斉『画図百鬼夜行』に〔幽谷響(やまひこ)〕がある。池波さんが、同書から借りた〔通り名(呼び名)〕なのかもしれない。いかにも、可愛らしい。
つぶやき:女の名が先---というが、[ロメオとジュリエット]は逆だね、という人もいよう。冗談と聞きながしてほしいのだが、陶磁器で、ブルー・アンド・ホワイトといったら「青と白」ではなく、染付(そめつけ)のこと。すなわち、白地に青の絵付けなのだ。プ゛ラック・アンド・ホワイトは、白地に黒の絵柄で、白黒写真。
アンドの後ろは台。
[ロメオ・アンド・ジュリエット]は、ジュリエットが台。その上で踊るロメオ。古今東西、女性が強い。
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- 〔山彦(やまびこ)〕の徳次郎(2005.08.24)
コメント
とうとう九州進出ですね。
九州からは盗人は登場しないと思っていました。
山彦なんていう土地名もあったなんて驚きです。
投稿: 豊島のお幾 | 2005.08.24 09:57
以前、盗人の出身県は、南は広島止まり、と
伺ったように思いますが、ついに探索の手は
九州まで延びましたか。
当時海を渡ってくるのは、難儀な事でしょう。
次はどこになるのか、生国を追いかける旅の楽しみが増えました。
投稿: みやこのお豊 | 2005.08.24 12:39