« 先手・弓の6番手と革たんぽ棒(4) | トップページ | 本城・西丸の2人の少老 »

2012.05.01

先手・弓の6番手と革たんぽ棒(5)

細かなことは、近いうちに若年寄衆と町奉行どの、それに先手の若い組頭の数人が寄って詰めるが、まず、江戸を4つに区分けする---」

というのは、10組の先手組を2ヶの組ずつ組ませて5組とし、1区分けの鎮圧は組んだほうの1つの組で受けもつ。
騒擾がすべて片づくまで分担の区分けは変えない。

「なぜ、2ヶ組にするかというと、こんどの騒擾は5日とか7日とかの昼夜にわたる気配がする。1ヶの組では2昼夜で全員が疲れはてて物の用に立たなくなる。2ヶの共ばたらきの組なら、総勢が75人から80人、小者まで含めると150人にはなるから、これを50人ずつの3交代制にしてまわせば、寝たり休んだりが十分にできる。仮に10日におよぶ連日の仕事となってもつづけられよう」

愛宕下(あたごした)〕の伸蔵(しんぞう)が覚めた声で、
「なるほど、働くのが1なら、休むのと寝るのに2をあてると、無理がありやせんな」
「ほころびは、1と1で思案したとき、3日目におきると亡父から躾(しつ)けられた」
「なんでもご存じのお父上でした」

うなずいた平蔵が説明をつづけた。

4つに区分けしたら、その地図にまず、火の見櫓(やぐら)を位置を記し、それぞれの火の見櫓から1丁(109m)ずつ離れている櫓を拾い出してつなぎ(通報)の櫓とする。
つづいて、1つの区分けにした地区を、4つに色分けする――白、赤、青――この3つ色と間違いなく識別ができる色といったら黄色かな、いや、白と赤を斜めに仕切ったほうが見分けがきこう。その4つの小旗をすべての櫓に備えつける。

長谷川さま。昼間はそれで櫓から櫓へとつなぎがとれましょうが、夜はそうは参りませんな」
浅草、今戸をとりしきっている〔木賊(とくさ)〕の今助(いますけ 39歳)が指摘して盃の冷たくなった酒をすすり、恥ずかしげに下をむいた。

今助元締どん、いいところへ気がついてくれた。今助どんならどうする?」
「龕灯(がんどう)かなんかを明滅させますかねえ。1回ずつなら1の地区とか……」
「すばらしい案だが、1つの区画に何十もの龕灯をそろえるのはことだろうなあ」
平蔵の疑問に、〔耳より〕の紋次(もんじ 44歳)が、
「提灯(ちょうちん)を左右に振ったら1の地区、上下させたら2の地区、斜めだったら3の地区…………」
4の地区でつまると、引きとった権七(ごんしち 55歳)が、
「後ろへまわしたら4の地区」
「できた!」
平蔵が低く叫ぶようにいい、
「実際は、持ったまままわって背中をむけるんだろうがね。左右の1との判別がつくようにな」

|

« 先手・弓の6番手と革たんぽ棒(4) | トップページ | 本城・西丸の2人の少老 »

018先手組頭」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 先手・弓の6番手と革たんぽ棒(4) | トップページ | 本城・西丸の2人の少老 »