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2005.02.01

〔豆岩(まめいわ)〕の岩五郎

『鬼平犯科帳』文庫巻1に収録されている[浅草・御厩河岸]で居酒屋〔豆岩〕をやりながら、筆頭与力・佐嶋忠介の手のもの・密偵として働いてもいる。

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年齢・容姿:35,6歳。5尺に足りないほどの矮躯。どんぐり眼。
生国:越中国射水郡(いみずごおり)伏木村(現・冨山県高岡市伏木)

探索の発端:岩五郎はいまは足を洗い、厩橋北詰の三好町で、品川の宿場女郎あがりの女房お勝(41歳)とともに小さな居酒屋〔豆岩〕を、隣の葭簀ばりの小店では草鞋や大福餅などを売りながら、火盗改メの密偵となっている。

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御厩河岸の渡し(『江戸名所図会』 塗り絵師:ちゅうすけ)

その岩五郎へ、お盗めを助(す)けないかといってきたのは、近くの淨念寺で寺男として身を隠している彦蔵であった。親分は〔海老坂〕の与兵衛であるという。海老坂は岩五郎の故郷・伏木からほんの目と鼻の先だし、いまは中風で寝ている父親の卯三郎(76歳)など、「一生に一度でもいいから、〔海老坂〕のお頭の下でお盗みがしてみたかった」が口ぐせである。

面接した岩五郎も、〔海老坂〕の与兵衛の人物の大きさに参ってしまい、密偵としての役目を忘れそうなったほどである。
というのも、父親の卯三郎とともに岩五郎が一味として働いていたのは、甲州・石和が本拠の鶍(いすか)の喜左衛門で、やはり、田舎盗人の格でしかなかったからである。

結末:岩五郎の密告で、〔海老坂〕の与兵衛は従容として縛についた。岩五郎夫婦と老父はいずこへか逃げた。

つぶやき:卯三郎が女房とまだ幼なかったせがれの岩五郎を高岡の町中に住まわせ、自分は薬の行商にまわりながら、上方一帯から近江へかけてお盗めをしていた〔中尾〕の治兵衛一味に加わっていた。この〔中尾〕の出身は、いまは冨山県の氷見市に併合されている「中尾」であろうか。伏木とは海岸ぞいにつながっている。

いや、岩五郎に登場してもらったわけはというと、幼いときに身についた味覚はかわらないものだが、出生地の食べ物について述懐した盗人はほとんどいないのに、岩五郎は父尾がつくってくれた「しんこ泥鰌鍋」を語っているからである。

私事をつけくわえる。2年前、知友の仲立ちで、豪華客船〔飛鳥〕で、竹橋桟橋-神戸港-唐津-屋久島-釜山港-
伏木---)の6泊7日の船旅で、[鬼平犯科帳]船上スピーチをしたことがあった。伏木で下船したが、〔飛鳥〕はその後も、青森、仙台と巡った。
それで、伏木、高岡を体験できた。もちろん「しんこ泥鰌」は食べていない。が、海老坂」「氷見」が身近になった。現地はふんでみるにかぎる。
とはいえ、60代までのぼくは、目が海外に向いていて、138都市に宿泊。海外ミステリーを読むには土地勘が役だつが、捕物帳にはいささか。こんご、国内の旅をこころがけるつもりである。

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コメント

いつも感心しているのですが、管理者さんは、盗人の生国に、○○郡(ごおり)と、江戸時代の郡名を付しておられますね。

あれは、どのようにしてお調べになっているのですか?

明治以来のはげしい市町村合併で、古い郡名をあたるのはきわめて困難とおもうのですが。

投稿: 文くばり丈太 | 2005.02.01 09:04

>文くばり丈太さん

とぼしい蔵書をのぞかないでください、と申しあげたいところです。ほんと、お恥ずかしい。

でも、ご要望ですから。
じつは以前、近藤出版社(千代田区神田神保町)が「日本史料選書」とした刊行した、
 木村 礎校訂『旧高旧領取調帳』の
 [関東編] 1969.09.01 3,500円(初刷)
 [中部編] 1977.04.20 6,800円(初刷)
 [東北編] 1979.08.25 3,200円(初刷)

なぜか、蔵書しているのはこの3冊のみ。
刊行は、このほか、
 [近畿編]
 [中国・四国編」
 [九州編]
と出ているのに、です。
これに、江戸期の郡名、村名、郷名が明記されています。(もっとも、中部編で今回検分した氷見村が永見村なんて、知らないと発見できないように誤植もありますが)。

投稿: ちゅうすけ | 2005.02.01 09:49

ちゅうすけさま こんにちは

お加代こと、通り名おっぺと申します。
「飛鳥」に目がいって。
就航した時、見学だけしました。
この項、鬼平と無関係なので、削除してください(てへへ)

投稿: 那の津のお加代 | 2005.05.24 10:36

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