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2005.03.07

〔舟見(ふなみ)の長兵衛

『鬼平犯科帳』文庫巻12に収録されている[いろおとこ]に、女賊おせつのお頭として名前を見せる盗賊。
(参照: 女賊おせつの項)

212

年齢・容姿:いずれも記載されていない。
生国:越中(えっちゅう)国下新川郡(しもにいかわごおり)舟見(ふなみ)村(現・冨山県下新川郡入善(にゅうぜん)町舟見)
1005
明治20年ごろの舟見

探索の発端:火盗改メ方・長谷川組(先手弓第2組)の同心・寺田又太郎が使っている密偵・〔堀切(ほりきり)の彦六が、かつて〔神子沢(かみこざわ)〕の留五郎一味で盗業についていたとき、引きこみ役にまだ小娘だったおせつがいた。
そのおせつが、茅場町薬師前の薬種問屋〔中村屋〕に引きこみとして入りこんでいるのを、いまは密偵として働いている彦六に見つけられたために、〔舟見〕一味の全貌を吐く始末となった。

結末:〔舟見〕一味19名は一網打尽に捕らえれたが、その中におせつは入っていなかった。
おせつが生き残ったことで、寺田又太郎が〔鹿熊(かぐま)の音蔵一味に刺殺され、弟の寺田金三郎までが命を狙われる次第となったが、これは別の物語である。

つぶやき:おせつと、男と女の深みにはまった寺田兄弟のことは笑えない。この深みは、男の側ばかりでなく、女の躰のまわりにもぽっかりと口をあけている。
深みは、おせつの気立てのやさしさやたよりなげな風情といった、外見のこととはまるで関係なく存在している。
それがわかっていて落ちるから、人生はままならないのだし、物語はいくつもいくつもつむぎだされる。大げさにいうと、男女の数ほど、ともいえようか。
[いろおとこ]の一篇は、シリーズの中でも[唖の十蔵][あばたの新助][消えた男][おしま金三郎]と同巧の、同心が女賊との深みにはまり、男が自分の職務を一瞬、見忘れて人生の別の道をあゆむ物語。

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コメント

「舟見」って、舟見温泉のあるところでしょう?
グループ旅行で浸かったことがあります。
黒部峡谷の上流ぞいに、宇名月温泉、黒薙温泉、鐘釣温泉、祖母谷温泉などが点々と連なっているとリーフレットにあり、こんどはどの温泉を試してみるかなって、はしゃいだことを思い出しました。
池波先生もきっとお浸かりらになったのですね。

投稿: 加代子 | 2005.03.07 16:40

>加代子さん

その、船見温泉ですが、いくらかは高台になっているのでしょうか?
で、日本海のほうに、帰帆する漁舟のとか北前船の往来が見えたとか----。

投稿: 西尾 忠久 | 2005.03.07 17:08

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