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2010.10.12

〔三文(さんもん)茶亭〕のお粂(くめ)

「今戸の〔銀波楼(ぎんぱろう)〕の女将と名のる年増と、番頭みたいなのが、菊川橋たもとの酒処〔ひさご〕でお待ちしています」
用人・松浦与助(よすけ 62歳)が告げた。
齢相応に地味にはつくりたがらない〔銀波楼〕の小浪(こなみ 36歳)のようなおんなには、与助は採点が辛い。

浅草・今戸一帯をとりしきっている〔木賊(とくさ)〕の二代目元締の今助(いますけ 30歳)も、杉浦用人の口にかかると片なしであった。

「師走で店が忙しいであろうに、お揃いでわざわざ、なにごとかな?」
「不景気で、忙しくなんかおまへん。たまにはお運びやすな」
小浪が、こころやすだてにぼやいた。

「おれのような貧乏旗本が行っては、よけいに不景気になるぞ」
軽くうけながして、今助iを目でうながした。

亭主然と小浪平蔵への酌をうながしておき、、
「じつは、お預かりしております御(おうまや)河岸の茶店〔小浪〕のことでごさいます」

参照】2010年9月9日〔小浪(こなみ)〕のお信(のぶ) (

小浪から買いとった火盗改メの持物だが、亡父・宣雄(のぶお・享年55歳)が仲に立ち、女盗〔不入斗(いりやまず)〕のお(のぶ 30歳=当時)が借りうけた。
4年後、尼寺へ身を隠すことになり、そのあいだだけ、小波にあとを頼んでいたのであった。

「おはんが、本気でみ仏の道に精進しやはるいうてやのに、いつまでもお預かりするのもなんやと---」
それがくせの下から見上げるよう艶っぽい眸(め)つきの小浪が、
「〔薬研堀(やげんぼり)の為右衛門(ためえもん 54歳)元締とこの小頭はんの〔於玉ヶ池(おたまがいけ)〕の伝六はんとも、よう話しおうてみましてん---」
小浪がいいよどんだので、平蔵は不吉な予感をもったが、〔於玉ヶ池〕伝六の名を聞き、疑念をはらった。

「薬研堀のお不動さんのそばの料亭〔草加(そうか)屋〕で女中頭をしておいでのお(くめ 36歳)さんにお引きうけもらえないかと---」
今助が言葉をついだ。

(おが茶店〔小浪〕の女主人になれば、夕暮れとともに店をしまえるから、お(つう 10歳)や善太(ぜんた 8歳)はもとより、松造(まつぞう 26歳)も揃って夕餉がとれる)

「分かった。おに話してみるが、〔草加屋〕への口利きは、〔於玉ヶ池〕の伝六どんだか---」
「それは、もう、話しずみです」
今助が請けおった。

「火盗改メには、おれから話す」
「お願いいたします」

「相談いいますのんは、おはんが住んではった、正覚寺(框寺)門前町のお家を買いとってあげななりまへん、このことどす」

そう、御厩河岸の茶店〔小浪])は火盗改メへの店代(たなだい 家賃)ですむことになっていたので、おは持ち金で門前町の家を買ったのであった。

(たしか、〔神崎かんざき)〕の伊之松(いのまつ)からの退き金(ひきがね)でまにあったとかいっていたから、土地別で25両(400万円)ほどであったような)

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