おまさ、[誘拐](4)
「〔三河(そごう)の定右衛門(さだえもん)という盗賊の首領について、引き継がれている留め書きをのこらずに集めさせておいてくれ」
平蔵(へいぞう 49歳)が館(たて) 伊蔵(いぞう 40歳 5年前に朔蔵改め)筆頭与力に命じたのは、[炎の色]で密偵・おまさ(37歳)が〔荒神(こうじん)のお夏( なつ 25歳)にあった翌日の夕刻であった。
平蔵が〔三河〕の定右衛門に興味をもったのは、〔荒神(こうじん)〕の二代目に就いたお夏が、定右衛門の下で盗(つとめ)の修行を積んだと、おまさに打ちあけたからであった。(文庫巻23[炎の色] p146 新装版p142)
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『鬼平犯科帳』を楽曲にたとえると、文庫24巻を通してあるときは強く、あるときは静かに流れている旋律の一つに、盗人(つとめにん)の3ヶ条の掟があるといえようか。
一、盗まれて難儀するものへは、手を出さぬこと。
一、つとめをするとき、人を殺傷せぬこと。
一、女を手ごめにせぬこと。
読み手はまず、この盗賊の頭は3ヶ条を守りとおしているかどうかで、その仁への好悪・愛憎の度合い決めてかかることが多い。
〔三河〕の定右衛門は3ヶ条を守りとおしてきたらしいが、寛政5年(1793)に病死し、息子が二代目を称しているものの、3ヶ条を踏襲しているかどうかは不明。
それというのも、初代・〔三河〕の定右衛門は、将軍の住まいがある江戸で盗み(つとめ)をするのは怖れおおいといい、府内はもちろん、駿府から東へは足をふみいれていないから、業績がほとんど記録されていなかった。
しかし、その薫陶を受けた〔荒神〕のお夏は、昨年の[炎の色]事件では〔峰山(みねやま)の初蔵(はつぞう)と組んで江戸での盗みに手をつけた。
お夏と二代目・〔三河〕の定右衛門とのあいだはどうなっているのであろうか?
おまさの誘拐に二代目はかかわっているのか?
〔荒神〕の助太郎の教えは、お夏にどれくらいの影響をのこしているか?
ここでちゅうすけの判断に迷いの粉をふりかけたのが、元盗賊・〔帯川(おびかわ)〕の源助(げんすけ)こと、平野屋源助の〔荒神〕の助太郎観であった。(文庫巻24[炎の色]p93 新装版p91)
源助は、ちゅうすけのとはいささか異なる見方をしていた。
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コメント
本屋さんで立読みしました。(文庫巻23[炎の色] p146 新装版p142 ),
平野屋源助の〔荒神〕の助太郎観(文庫巻24[誘拐]p93 新装版p91 )。[誘拐]は[炎の色]では、ないでしょうか。資料が少なく、体調も不十分ななかでの作業、あたまが下がります。いよいよ、おまさの救出ですね。期待しております。
投稿: 安池 | 2012.06.22 17:16
>安池さん
ありがとうございました。ご指摘のとうりに訂正させていただきました。
緩和ケア病棟というのは、ゆるやかなルールの病室の集まりですが、一般廊下へのドアは朝6時にしか開かず、しかも30分おきに看護士が「痛いところはないか?」「入浴はどうする?」とか訊きにくるので集中できません。それにいろんな細密検査であれこれ病巣を新発見してはその対策を討議するのです。
早々に帰宅させてもらいたいと請願していますが、たぶん、簡単には許可されないでしょうね。しばらく煩瑣を我慢です。近況報告に代えて。゛
投稿: ちゅうすけ | 2012.06.23 04:02