〔不破(ふわ)〕の惣七
『鬼平犯科帳』文庫巻7に収録の[泥鰌の和助始末]に登場している食えない盗人夫婦。
役者くずれ料理人くずれで、腹の底では何を考えているのかわからないような男なので、先代〔狐火〕のお頭がていよく追い出した。
他人のお盗め金を横取りする、盗人の風上におけない奴。
女房おかねもいっとき、先代〔狐火〕の勇五郎のところで、引き込みをやったことがあり、おまさとは顔見知り。
年齢・容姿:45,6。でっぷりと肥え、顔の血色もあざやかで、人あたりもいい。
女房おかねは、大女。
生国:美濃国不破郡のどこか(現・岐阜県不破郡内)
探索の発端:嫡男・辰蔵が通っている市ヶ谷左内坂上の坪井主水道場へ、松田十五郎と名乗る剣客(50がらみ)が現れたことから、鬼平は、その剣風で、20t数年前に高杉銀平道場の食客だった松岡重兵衛と察する。
(参照: 剣客・松岡重兵衛の項)
そのころ、無頼の徒の頭分を気どっていて小遣い銭に窮した銕三郎(平蔵の家督前の名)は、岸井左馬之助とともに盗人の手伝いをしようとしたのを、松岡重兵衛にこっぴどくたしなめられて、思いとどまったことがある。
結末:〔不破〕の惣七を、松岡重兵衛が信用し、〔泥鰌〕の和助の計画---自殺した息子の仇討ちを兼ねたお盗めの一味に引き入れたが、けっきょく、裏切られる。重兵衛も和助も〔不破〕の惣七が雇った浪人たちに斬殺される。
〔不破〕の惣七と浪人4人が火盗改メの縄にかかかり、獄門。
つぶやき:他人が苦労して得た盗み金を、横からさらっていくなんて、言語道断。
しかし、情報社会の現在は、横取りされるのは金だけではない。情報もそうだし、アイデアもそう。
『江戸名所図会』は池波さんが1日に1回は見て、創作の糧としているとエッセイにあったので、少年時代に画家を志した池波さんのことゆえ、『名所図会』の長谷川雪旦の単彩の絵も頭の中で彩色しているに違いない、と推察。
それで、8年前から、枠つき2ページに分かれている『江戸名所図会』の絵の枠を取っ払ってつなぎ目を補整して元絵をつくり、それを〔鬼平〕クラスの有志で塗り絵して江戸を現代によみがえらせた。
また、『鬼平犯科帳』や『剣客商売』のこの場面はこの絵が発想のバネ----とリスト化し、FDに入れて情報の共有化ということでクラスのメンバーへ配布したら、さっそく真似したばかりか、さも自分のアイデアのように装い、しかも、ホームページのタイトルまでもパクリ同然につけたのが現れた。
現代版〔不破〕の惣七である。こういうご仁は、反省ということを知らない。
この仁がクラスにいたときに塗り絵をすすめたら、「私は塗り絵はしません」とにべもなく断ってきたのだが---。
ま、松岡重兵衛ほどの苦労人でも、〔不破〕の惣七の本性を見破れなかったのだから、凡人のぼくがだまされたのはいたしかたないか。
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コメント
最近各所で、彩色展示されている「江戸名所図会」を
見たり、実際に彩色したりして「鬼平」の世界を
楽しんでいましたが、
雪旦の「原画」から元絵を作るのって、たいへんなんですね。
今あらためて解って、感動してます。
これからは、もっと注意深く池波さんの観察眼を真似して「名所図会」眺め、新しい発見をしながら
「鬼平犯科帖」を楽しんでいこうと思いました。
投稿: みやこのお豊 | 2005.01.12 08:40
>みやこのお豊さん
『江戸名所図会』の元絵づくりの苦労、お察しくださり、感激。
この『図会』には、約700景あるのです。
それらを全部、元絵化するには、少なく見積もっても600時間以上かかりました。
鬼平に出てくる景だけなら200前後ですみますが、いま、駅でのギャラリー展となると、その駅のメリットになるように、沿線の景色を掲示するので、けっきょく、700景あまさずつくっておいたほうがいい、と判断したのです。
また、池波さんの作品は『鬼平犯科帳』だけではありませんしね。
600時間。1日3時間あてても、200日。
1時間の労賃をスーパーのレジ並みに1,000円としたって、60万円。
600景を2度やりましたから、まあ、使命感なくては、つづかなかったとおもいますよ。
投稿: 西尾 忠久 | 2005.01.12 14:44