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2005.03.31

〔鹿山(かやま)〕の市之助

『鬼平犯科帳』文庫巻8に収録の[流星]で、大坂の艾問屋[山家屋]仙右衛門と組んで大仕掛けの悪業を働く兇賊の首領。

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年齢・容姿:荒っぽい所業をつづけているにもかかわらず、記載がない。
生国:武蔵(むさし)国高麗郡(こまこおり)鹿山(かやま)村(現・埼玉県日高市鹿山)

探索の発端:長谷川組の同心・原田一之助の妻女きよが白昼、四谷御門外で惨殺された。つづいて与力・三浦助右衛門の次男・又二郎が三光院稲荷のところで襲われて死亡。
浅草・北馬道の味噌問屋〔佐野蔵〕と、本郷2丁目の扇問屋〔太田屋〕が同じ日に押し入られて一家皆殺し。
先手弓組の山本伊予守組の同心・木下与平治が暗殺されたのにつづき、火盗改メの役宅の門番が斬り殺された。
そして、思案橋ぎわの船宿〔加賀屋〕の船頭・友五郎が仮親をつとめていた、故・〔飯富〕の勘八お頭の遺児・庄太郎が奉公先から行方不明となり、友五郎も姿を消した。
(参照: 〔浜崎〕の友蔵の項)
ここへきて、探索は、友五郎がむかしやっていた川越船頭の新河岸川向けられた。

結末:新河岸川(しんがしがわ)ぞい、福岡村のあたりの廃寺に、〔鹿山(かやま)〕一味と仙右衛門の配下が長谷川組の急襲を受け、18名逮捕。盗人たちは死罪。手伝わされた友五郎は遠島。
庄太郎は染井村で無事に救出。

つぶやき:ノンフィクション作家・後藤正治さんが日経新聞(2005.03.19)夕刊「あすへの話題」に、「究極の読書」と題して書いていた。
睡眠薬代わりの読みものには、「もっぱら池波正太郎氏の『鬼平犯科帳』のお世話になっている」「全巻、一度は読んだはずであるが、筋はすっかり忘れていて、常に新刊をひも解いている感がある」「前夜、読んでいたところもすっかり忘れてしまっていて、同じページを何度もめくるテイタラクなのだ」「悪党盗っ人は最後、切られて、鬼平の刀の錆びとなってしまう。勧善懲悪、寝床の本は罪がないのが一番である」
「睡魔のなか現世幽界さだかならぬ読書。これぞ究極の読書というべきか」

後藤さんが記している点が、池波小説の特長であり、泣きどころでもあろうか。

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コメント

昔も今もお寺は日本人にとって何だろうかと考えてしまう。 日本人は御利益を先に考えてしまう。 お寺が神聖な場所としての観念が不足しているのではないかと考えています。 お坊さんは別でしょうけれど、一般の人にとって、また「鬼平犯科帳」では盗賊がお寺に押し入り殺傷や仏像を盗む話が多いですね。 「流星」の鹿山市之助もお寺に押し入っています、宗教観が小さいときから身に付いていないからでしょうか。 本当に神聖な場所だと考えたら悪事でもお寺では行わないでしょう。 外国では教会に入るとき人々は敬意を表しますが。 日本ではお布施をするときも「ご利益がありますように」祈りますね。

投稿: edoaruki | 2005.03.31 12:38

>edoaruki さん

宗教論は苦手ですが、どの宗教も、民衆を釈伏するときには、現世ご利益を説くのではないでしようか。

たとえば、キリスト教やイスラム教の基となっているユダヤ教でも、戒律は生活戒律で、生の魚を食べてはいかん---冷蔵庫がなかったから腐りやすい、豚肉はいかん---肉の中に寄生虫がいる、メンスが終わってから1週間は交わってはいかん---衛生と女体保護---とかなど、現世ご利益がぶらさがつています。

江戸期の仏教は、ある程度堕落していたのではないでしょうか。お寺が金融機関をかねていたこともありましょうし。

それで、盗人に狙われた---神社はまったく襲われていませんね。


投稿: ちゅうすけ | 2005.03.31 16:14

mixiから来ました。
川越船頭や荒川の海運について、川越市立博物館の解説が詳しく、イメージがよく沸きます。まだでしたら是非行かれることをおすすめします。
新河岸の船着場跡(?)も川越市牛子(新河岸駅から徒歩15分くらい)にあり、まだ少し面影も残っているので、なんとなく廃寺の下に船が吸い込まれていく様などを想像してしまいます。

投稿: ミツヒコ | 2005.05.23 12:54

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» 流星 [江戸を歩く]
鬼平犯科帳の中で長谷川平蔵の相手に応じ融通むげ真剣にも遊びにもなる一面を最も示し [続きを読む]

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